インドで
この記事でわかること
- インドが注目される理由と、BtoBの取引の特徴(決め方・価格・言葉・地域)
- インドに売る5つの方法と、それぞれの向き不向き
- LinkedInでインドの決裁者を探して声をかける手順と、最初の90日の進め方
インドのビジネスが注目される理由
インドが日本のBtoB企業から注目される理由は、市場の大きさと伸び、そして日本企業の進出の厚みです。
- 人口が世界で最も多い: 国連は2023年4月、インドの人口がその月の末に約14億2,578万人に達し、中国を抜いて世界最多になる見込みだと発表しました。外務省の基礎データでは、2024年の人口は14億5,094万人(世界銀行)です。
- 高い成長が見込まれる: IMF(国際通貨基金)の世界経済見通し(2026年7月の改定)は、インドの実質経済成長率を2026年度に6.4%と見込み、世界全体の3.0%を大きく上回ります。IMFはインドを「主要国の中で最も成長の速い国の一つ」としています。
- 日本企業の進出が多い: 在インド日本国大使館などが公表する「インド進出日系企業リスト」では、2024年10月時点の日系企業は1,434社、拠点は5,205です。
- 日本との経済連携協定がある: 日本とインドの包括的経済連携協定(CEPA)は、2011年8月1日に発効しています。
市場が大きいぶん、どこから手をつけるかを決めないと動けません。ここからは、日本から売り始める会社の側から、進め方を見ていきます。海外営業そのものの基本は「海外営業とは?仕事内容・国内営業との違いと、少人数で始める新規開拓の進め方」で解説しています。
インドのBtoB取引の特徴
インドの会社と取引するときに押さえたい特徴は、次の5つです。
| 項目 | インドで起きやすいこと | 営業での対応 |
|---|---|---|
| 決める人 | オーナー企業では経営者が最後に決めることが多い。大企業は関わる部門が多い | 経営者と現場の担当者の両方と話す |
| 価格 | 価格をよく比べ、値引きの交渉が前提になりやすい | 値引きの幅と条件を先に決め、使う年数全体の費用で説明する |
| 関係づくり | 信頼できる相手かを、会話の積み重ねや紹介で確かめる | 早く返し、オンラインの面談で顔を合わせる |
| 言葉 | ビジネスでは英語が広く使われる。地域の言葉も多い | 文章は英語で。名前・数字は必ず見直す |
| 地域 | 州ごとに言葉・産業・手続きの運用が違う | 最初は州や都市を1〜2つに絞る |
決める人:経営者と担当者の両方に会う インドには創業家やオーナーが経営する会社が多くあり、Managing Director(MD)やDirectorなどの経営者が最後に判断することがよくあります。大企業では、購買・技術・品質など、関わる人が増えます。最初に話した相手に「社内で誰が、どの順で決めるか」を聞いておくと、次に会うべき人が分かります。
インド向けの支援でも、選ぶ人が製品によって違うことが分かりました。部品によっては、使う工場ではなく機械メーカーが選び、工場はそれが組み込まれた設備として買います。使う工場が自分で選ぶ製品もあるので、製品ごとに誰が選ぶのかを確かめてから、声をかける相手を決めます。
COSPALinksの支援では、作ったばかりのアカウントから、いきなり経営トップに申請することは避けています。インド向けでも、まずマネージャーの層から声をかけ、DirectorやPlant Headへと段階的に上げていきました。
- 1マネージャーの
層から 声を かける - 2Directorや
Plant Headへ、 段階的に 上げる
価格:値引きに備え、使う年数全体の費用で説明する 最初の見積もりから交渉が入る前提で、どこまで下げられるか、数量や支払条件と引き換えにするかを、社内で先に決めておきます。価格だけで比べられないよう、壊れにくさ、保守、消耗品まで含めた、使う年数全体の費用(総保有コスト)で説明します。
関係づくりと言葉:顔を見せ、英語で始める 相手は「信頼できるか」「長く付き合えるか」を見ています。メッセージだけで終わらせず、早めにオンラインの面談で顔を合わせます。外務省の基礎データによると、インドの連邦公用語はヒンディー語で、ほかに憲法で認められた州の言語が21あります。ビジネスの場では英語が広く使われるので、日本から声をかけるときは英語で構いません。英語のやり取りは、AI翻訳で壁が大きく下がりました。一方、英語以外の言語は、ネイティブが書かないと不自然になります。地域の言葉で資料を作るなら、ネイティブに書いてもらいます。
インドに売る主な方法(進出の形)
インドに売る方法は、主に5つです。
| 方法 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 代理店・販売店 | 現地での販売・在庫・保守を任せたい | 1社で国全体を回れるとは限らない。担当地域と独占の範囲を決める |
| 現地パートナー(商社・提携先) | 顧客や手続きに強い現地の会社と組みたい | 役割と利益の分け方を契約で決める |
| 展示会 | 実物を見せ、短い期間で多くの人に会いたい | 費用が大きい。会期の後にすぐ連絡しないと途切れる |
| 現地法人・支店・駐在員事務所 | 売上の見込みが立ち、腰を据えて売りたい | 形ごとにできる活動と手続きが違う。最初の一歩には重い |
| オンラインでの直接アプローチ(LinkedInなど) | 州・業界・役職を決めて、決裁者に先に声をかけたい | 会うまでに時間がかかる。毎日の小さな作業が要る |
- 代理店・販売店: インドは国が広いので、州や地域ごとに代理店を置くこともあります。契約では、担当地域、独占かどうか、最低の購入量、契約の終わり方を決めます。候補の探し方と選び方は「海外代理店の探し方・見つけ方|LinkedInで候補を探して声をかける手順と、選び方」で解説しています。
- 現地パートナー: 商社、システム会社、エンジニアリング会社など、すでに顧客を持つ会社と組みます。ITやサービスの会社なら、導入や保守を担う現地の会社と組むと、顧客の安心につながります。
- 展示会: 会期の前にLinkedInで来場しそうな人に声をかけ、会う約束を取っておくと、会期中の時間を有効に使えます。インド向けの支援でも、会期の前のメッセージで来場の予定を聞くようにしています。来ないという相手からも、関心はあると返事が来ることがあります。展示会に合わせてLinkedInを始めたいというご相談では、社内の準備やアカウントの準備にかかる期間を逆算すると、会期に間に合わないとお伝えしたこともあります。準備の流れは「海外展示会の準備は6週間前から|事前アポの取り方・LinkedIn活用・費用を解説」にまとめています。
- 現地法人など: 駐在員事務所・支店・現地法人では、できる活動、手続き、税の扱いが違います。売上の見込みが立ってから、専門家に相談して形を選びます。
- オンラインでの直接アプローチ: 反応を見ながら州や業界を変えられるので、ほかの方法に費用をかける前に、市場を確かめる使い方にも向いています。
選び方と組み合わせ方の全体は「海外の販路開拓とは?新規開拓の方法・進め方と、販路の選び方」で比べています。
LinkedInでインドの決裁者を探して声をかける
LinkedInは仕事のためのSNSで、200以上の国と地域で14億人以上が登録しています。LinkedIn自身も「About LinkedIn」で、世界最大のプロフェッショナルネットワークと紹介しています。会社名だけでなく部署や役職まで分かるので、インドの決裁者を日本から探して、直接声をかけられます。
1. Sales Navigatorで、州・業界・役職から絞る
Sales Navigator(LinkedInの営業向けの有料版)では、次の条件を組み合わせて相手を探せます。
- 地域: India全体ではなく、MaharashtraやTamil Naduのような州や、都市まで絞る
- 業界と会社の規模: 自社の製品を使う業界と、従業員数
- 部門と役職の高さ: 購買・技術・生産などの部門と、Owner / Partner、CXO、Directorなどの役職の高さ
- 役職名のキーワード: Managing Director、Head of Procurement、Purchase Manager、Plant Headなど
- 1地域India全体ではなく州や
都市まで MaharashtraTamil絞る Nadu - 2業界と
会社の 自社の規模 製品を 使う 業界と、 従業員数 - 3部門と
役職の 購買・高さ 技術・ Owner /生産などの 部門と、 役職の 高さ Partner CXODirector - 4役職名の
キーワード 同じ仕事でも Managing役職名は さまざま。 役職の 高さと 組み合わせて、 取り こぼしを 減らす Director Headof PurchaseProcurement Manager PlantHead
インドの会社では、同じ仕事でも役職名がさまざまです。役職の高さとキーワードを組み合わせると、取りこぼしが減ります。狙う相手がLinkedInにどれだけいるかは業界や役職で差があるので、Sales Navigatorの1か月の無料トライアルの間に、条件ごとの人数を確かめてから計画を立てます。機能の全体は「LinkedIn Sales Navigatorとは?できること・無料版との違い・使い方を解説【2026年版】」とLinkedIn公式の「Sales Navigatorの使い方」、国・業界・役職の決め方は「LinkedIn海外営業のターゲット設定|国・業界・役職の決め方と、相手の人数の確かめ方」で確かめられます。
2. つながり申請と最初のメッセージ
申請の前に、プロフィールの見出しと自己紹介を英語にし、何の会社で、誰の役に立つのかが分かるようにします。申請に添える文は相手ごとに合わせるのが理想ですが、書けずに止まるより、メッセージなしでも送るほうがよいです。承認される割合は、ざっくり2〜6割で、国や相手でかなり変わります。アジアは3〜6割を狙えます。申請は1日10〜15分ほどで回せます。
支援の現場でも、インドの相手は申請への反応がよい傾向があります。北米・欧州・アジアの食品・飲料メーカーに声をかけた素材メーカーの支援でも、インドの承認は高めで、アメリカは低めでした。
その分、つながる相手がインドに偏ることもあります。自社でLinkedInを使っている会社からも、つながった相手にインドの人が多い、という話を聞いています。ほかの国が本命なら、国ごとのつながりの数を見て、申請の配分を直します。
英文は短く、なぜ相手に声をかけたのかを1文で書きます(名前と地名は例です)。
- 申請に添える文:Hi Rajesh, I work with a Japanese maker of precision cutting tools. I see your plant in Pune makes auto components, so I’d be glad to connect.
- つながった後の最初の1通:Thank you for connecting, Rajesh. We help component plants reduce tool changes with longer-life tools. Would a 20-minute online call next week be useful? I can share a one-page overview first.
場面ごとの文面の型は「LinkedInの英語メッセージ例文集|海外営業のつながり申請・最初の1通・フォローの型」にまとめています。
3. つながった後:早く返し、面談につなぐ
返信が届いたら2〜3日以内に返し、3〜4回のやり取りで、資料の送付やオンラインの面談につなげるのが目安です。面談では、社内の決め方、予算を決める時期、ほかに比べている製品を聞きます。連絡の手段は、相手が使いたいもの(メール、オンライン会議、電話など)に合わせます。つながった相手を自社の企業ページのフォローに招待しておくと、関係が会社に残ります。ただ、支援の現場では、最初のメッセージで企業ページのフォローを頼むと、よくある営業のメッセージとして読み流されがちでした。関心はあっても今すぐではない相手に、「今後の情報はこちらで」と添えて案内しています。
インド向けの支援では、つながった後のやり取りで、次のようなことも見えてきました。
- 電話番号を聞く: 電話番号を聞いて嫌がられ、返事が止まることはほとんどありませんでした。電話でも連絡が取れるようになると、メールやLinkedInだけのときより、連絡が早く返ってきます。
- 用件をはっきり伝える: すぐにメールでのやり取りを求めてくる相手の中には、採用の話だと受け取っている人もいます。製品の紹介であることを先に伝えてから、話を続けます。最初は採用の話だった相手が、あとで製品に関心を持ってくれたこともありました。
- 連絡を続ける: 1回で止めずに連絡を続けると、相手が会社を移っていたり、決める立場でなかったりしても、担当の人を紹介してもらえることがよくありました。
- 相手の課題から話す: はじめは1つの製品に絞って話していましたが、返信を読むと、相手の関心は古い設備の入れ替え、設備の構成が複雑なこと、品質のデータの見える化など、さまざまでした。途中から、製品を先に出すのではなく、相手の課題を聞いてから、合う製品を選んで勧める形に切り替えました。
- 関係のない相手は早く分かる: インドの担当者は返信が早く、関係のない話なら「うちには関係ない」とはっきり返してくれることが多くありました。見込みのない相手が早く分かるので、関心のある相手に時間を回せます。
流れの全体は「LinkedIn海外営業とは?Sales Navigatorで海外顧客を開拓する方法と成功事例|国選び・英語・展示会との違い」、南アジア(インドなど)の教育関係者にLinkedInで声をかけた例は「株式会社サーティファイ 様」の導入事例で紹介しています。東南アジアで売る国を選ぶときの考え方は「ベトナム・東南アジアの販路開拓」で解説しています。
インド向けの営業で気をつけたいこと
- 支払条件: 初めての相手に後払いで出荷すると、回収できない危険を売り手が負います。最初の取引は、前払いの割合を増やす、信用状(L/C。買い手の銀行が支払いを約束する仕組み)を使うなど、条件を先に決めます。通貨と為替の扱いも見積もりに書きます。
- 契約: 価格の有効期限、貿易条件(インコタームズ)、納期、保証、もめたときの解決方法(どの国の法律で、どこで仲裁するか)を書面で決めます。
- 税金: インドの会社からサービスやソフトウェアの対価を受け取るとき、インド側で税金が源泉徴収されることがあります。日本とインドの租税条約の扱いも含め、契約の前に税理士などの専門家に確かめます。
- 規格・認証と輸出管理: 製品によっては、インド政府が品質管理令(QCO)で、インドの規格への適合とBIS(インド規格局)の認証マークを義務にしています。対象かどうかはBISの強制認証のページで早めに確かめます。日本からの輸出管理(安全保障貿易管理)に当たるかも、経済産業省の案内で確かめます。
- 関税: CEPAで関税の扱いが変わる品目があります。製品の分類番号(HSコード)と原産地の条件を、通関業者などに確かめます。
- 時差: インドは日本より3時間30分遅く、夏時間はありません。インドの朝9時は日本の12時30分なので、日本の午後は面談を入れやすい時間です。時差の合わせ方は「LinkedIn投稿時間の決め方|おすすめの曜日・時間帯と、予約投稿・海外向けの時差の合わせ方」にまとめています。
- 返信の速さ: 相手は、ほかの国の会社とも比べています。届いた連絡には、日本の業務時間のうちに返します。大きな祭りの時期は返事が止まりやすいので、急ぐ話は前倒しで進めます。
最初の90日の進め方
日本からインドへの営業を始めるときの、最初の90日の目安です。90日で判断して止めるための期間ではなく、続ける土台をつくる期間です。結果は製品と相手で大きく変わるので、反応の中身を記録します。
- 1〜30日州・
業界・ 英語の役職を 決め、 申請を 始める 資料と 見積もりの 型を 整え、 認証・ 輸出管理・ 関税を 確かめる - 31〜60日返信に
早く 2〜返し、 条件を 直す 3 日以内に返し、 3〜4往復で 資料や オンラインの 面談へ - 61〜90日面談で、
決め方と 代理店の予算の 時期を 聞く 候補とも 話し、 反応の よい 州で 展示会や 現地での 面談を 検討する - 90日の
後 作業は止めない 反応のよかった 州と 業界に 時間を 寄せ、 費用の 大きい 方法を 足す
| 期間 | やること | 記録すること |
|---|---|---|
| 1〜30日 | 州・業界・役職を決める。英語のプロフィール・資料・見積もりの型を整える。認証・輸出管理・関税を確かめる。Sales Navigatorで条件ごとの人数を確かめ、申請を始める(1日10〜15分) | 条件ごとの人数、申請と承認の数 |
| 31〜60日 | 申請を続ける。返信には2〜3日以内に返し、3〜4往復で資料やオンラインの面談へ。反応を見て条件を直す | 州・業界・役職ごとの返信の中身、面談の数 |
| 61〜90日 | 面談で、決め方・予算の時期・比べている製品を聞く。代理店やパートナーの候補とも話す。反応のよい州で、展示会や現地での面談を検討する | 見積もりの依頼、代理店の候補、次に力を入れる州 |
記録の数え方も、早めに決めておきます。インド向けの支援では、途中で有望リードの数え方を厳しくし、連絡先が取れた相手だけを数えるようにしました。COSPALinksでは、この数え方を始める前にすり合わせています。
同じ支援では、声をかける業界を月ごとに絞って切り替えました。業界を替えた後も、承認と返信は続きました。
最初の月は、あえて本命ではない業界から始めました。作ったばかりのアカウントは、つながりが少なく、相手から見た信用もまだ育っていないからです。本命の業界は、つながりが増えた後の月に回しています。業界を替えるたびに、マネージャーの層から声をかけ直すのも、同じ考え方です。
90日の後も、作業は止めません。反応のよかった州と業界に時間を寄せ、代理店や展示会など、費用の大きい方法を足していきます。
まとめ
- インドは人口が世界で最も多く、IMFは主要国の中でも高い成長を見込む。日系企業の拠点も多い
- 取引の特徴は、経営者が決める会社が多いこと、価格への厳しさ、関係づくり、英語と地域の言葉、州ごとの違い
- 売る方法は、代理店・販売店、現地パートナー、展示会、現地法人など、オンラインでの直接アプローチ。州を絞り、1つを中心に組み合わせる
- LinkedInでは、Sales Navigatorで州・業界・役職から決裁者を探し、早く返して面談につなぐ
- 支払条件・契約・税・認証・時差を先に確かめ、最初の90日は続ける土台をつくる期間にする
COSPALinksは、LinkedInを使った海外営業を支援しています。狙う国と相手の決め方から、代理店や展示会と組み合わせた進め方までを、資料ライブラリにまとめています。
よくある質問
A始めるには英語で足ります。ビジネスの場では英語が広く使われます。ただ、インドにはヒンディー語のほか州の言語が多くあるので、地域の顧客向けの資料や広告は、その地域の言葉をネイティブに書いてもらいます。
A売れます。日本から輸出し、代理店・販売店や現地パートナーを通して売る形や、LinkedInで日本から直接声をかける形があります。現地法人は、売上の見込みが立ってから考えます。ITやサービスの会社は、税金の扱いを専門家に確かめておきます。
ALinkedInは仕事のつながりをつくる場なので、仕事の話で声をかけること自体は自然です。自社が何の会社で、なぜ相手に声をかけたのかを短く書き、最初の数通では売り込みを控えめにします。返事がない相手には、時期を空けて、別の話題で連絡します。
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