インドネシアで
この記事でわかること
- インドネシアのBtoBの買い手(日系の工場と地場企業)の特徴と、決める人がいる場所
- 直接・商社・代理店・展示会・現地法人の5つの入り方と、輸入の規制・認証の確かめ方の入口
- 日本からLinkedInでインドネシアの決裁者を探して会う手順と、気をつけたいこと
インドネシアの販路開拓は「買い手がどこに集まり、誰が決めるか」をつかむところから
BtoBでインドネシアの売り先を探すときに先に見たいのは、市場の大きさより、買い手がどこに集まり、誰が買うものを決めているかです。工場はジャカルタの周辺に多く、日系の工場では、決める人がインドネシアにいるとは限りません。
外務省の「インドネシア基礎データ」から、売り先として見るときに押さえたい点を3つ挙げます。
- 製造業が最大の産業: 名目GDPに占める割合は、製造業が18.7%で最も大きく、卸売・小売(12.9%)、農林水産業(12.5%)が続きます(2023年、インドネシア政府統計)。
- 日本との取引が多い: 2023年のインドネシアの輸出先・輸入元のどちらでも、日本は3位です(石油・ガスを除く)。日本から買っている主な品物は、一般機器、輸送用機器、鉄鋼などです。
- 人口と宗教: 人口は約2.79億人で、宗教はイスラム教が87%です(どちらも2023年)。ハラル(イスラム教で許されたもの)の認証や、休みの時期に関わります。
この記事は、インドネシアに売ると決めた会社や、インドネシアから引き合いがある会社に向けて書いています。東南アジアのどの国から始めるかは「ベトナム・東南アジアの販路開拓」、タイは「タイの販路開拓」、地域統括の拠点が集まるシンガポールは「シンガポールの販路開拓」、インドは「インドビジネスの始め方」、販路開拓の方法の比べ方の全体は「海外の販路開拓とは?」で解説しています。
インドネシアのBtoBの買い手:日系の工場と地場企業
インドネシアで製品を買う会社は、日系企業の現地法人と地場の企業が中心で、日系以外の外資の工場も加わります。どれに売るかで、会う相手も入り方も変わります。
| 買い手 | 決める人と場所 | 営業での対応 |
|---|---|---|
| 日系企業の現地法人(工場・販売会社) | 現地の社長・工場長と、インドネシア人の購買・技術の管理職。部品や材料を日本の本社が指定していることもある | 現地と日本の本社の両方に話を通す。取引のある商社を入口にすることもある |
| 地場企業 | オーナーや経営陣が最後に決めることが多い | 担当者と話しながら、経営陣に会う機会をつくる |
| 日系以外の外資の工場 | 本国の本社や地域の拠点が、調達先を決めることもある | 地域の拠点や本社の調達の担当にも会う |
日系の工場:ジャカルタの東の工業団地に集まる
ジャカルタの東、西ジャワ州のブカシ県・カラワン県には、MM2100、EJIP、KIICなどの工業団地が並び、二輪・自動車関連をはじめとする日系の工場が多く入っています。東ジャワ州のスラバヤの郊外の工業団地にも、日系企業が多く入っています。インドネシアは島の多い国ですが、工場向けの製品なら、まずジャワ島の工業団地に絞ると相手を探しやすくなります。
日系の工場では、本社の設計で部品や材料が決まっていて、現地の購買担当だけでは切り替わらないことがあります。社長や工場長は駐在員であることが多いので、インドネシア人の管理職ともつながっておきます。本社の指定か、現地で選ぶかの見分け方は「タイの販路開拓」で解説しています。
地場企業:オーナーや経営陣が最後に決める
地場の企業では、担当者が前向きでも、最後はオーナーや経営陣が判断することがよくあります。英語の役職名は、社長にあたる人がPresident Director、取締役がDirectorとなっていることが多くあります。担当者と話しながら、経営陣と顔を合わせる機会をつくります。
言葉と商習慣:英語で始め、関係を先につくる
外務省の基礎データでは、言語はインドネシア語です。英語で仕事をする人もいますが、社内のやり取りはインドネシア語という会社も多くあります。日本から声をかけるときは英語で始め、相手が日本人の駐在員なら日本語で構いません。英語のやり取りは、AI翻訳で壁が大きく下がりました。一方、英語以外の言語はネイティブが書かないと不自然になるので、インドネシア語の資料はネイティブに書いてもらいます。
雑談や顔を合わせることを大事にする相手が多く、メッセージだけでは話が進みにくい国です。その場ではっきり断らないこともあるので、面談の後に、決まったことと次の期日を文面で確かめます。
決める人はどこにいるか
決める人がいる場所は、3つに分かれます。
- インドネシアの現地法人・地場企業: 現地で選ぶ部品・設備・消耗品。購買・技術・工場の管理職に会う
- 日本の本社: 本社が部品・材料を指定している日系の工場。本社の担当にも会う
- 地域の統括拠点: 東南アジアの調達をシンガポールなどでまとめる会社。役職名にSoutheast AsiaやAPACが入る人に会う
外からは分からないので、最初の面談で、仕入れ先をどこの誰が選んでいるかを聞きます。
インドネシアへの5つの入り方(直接・商社・代理店・展示会・現地法人)
インドネシアに売る入り方は、主に5つです。
| 入り方 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 日本から直接売る(直接輸出) | 仕様の相談が要る製品。決裁者と直接話したい | 輸入者になるのは買い手。輸入の資格と認証の手続きを先に確かめる |
| 商社を通す(日本の商社・インドネシアにある日系商社) | 日系の工場が取引のある商社から買いたい。輸入の実務を任せたい | 買い手の声が届きにくい。商社の中で後回しにならないか |
| インドネシアの代理店・販売店 | 地場企業に広く売りたい。輸入・在庫・保守を現地で任せたい | 島が多く、1社で国全体を回れるとは限らない。任せる地域を島や州で決める |
| 展示会 | 実物を見せたい。地場企業の担当者にまとめて会いたい | 会期の前に会う約束を取らないと、名刺の交換で終わりやすい |
| 現地法人 | 売上の見込みが立ち、在庫や技術の担当を現地に置きたい | 業種ごとの外資の出資の制限や、投資額・資本金の条件がある。最初の一歩には重い |
- 日本から直接売る: 仕様の相談から自社で受け持てます。ただし輸入者になるのは買い手なので、相手の輸入の資格を確かめます(次の章)。輸出の手順は「海外輸出の始め方」にまとめています。
- 商社を通す: 日系の工場は、取引のある商社を通して買うほうを選ぶことがあります。その場合も、技術の話は自社で続けます。商社の側の進め方は「商社の海外新規開拓にLinkedInを使う方法」で解説しています。
- 代理店・販売店: 地場企業に売るなら、輸入・在庫・保守を受け持つ代理店が力になります。契約では、任せる地域と、認証や製品の登録を誰の名前で取るかを決めます。探し方は「海外代理店の探し方・見つけ方」、契約の決め方は「海外代理店契約の基本」で解説しています。
- 展示会: ジャカルタでは、製造業向けの展示会(Manufacturing Indonesiaなど)が開かれています。会期の前に、来場しそうな相手とLinkedInで会う約束を取ります。この進め方を国内の展示会で試した第一実業は、1か月でつながり申請468件、つながり196件、返信63件、有望リード10件につなげています。会期の後のやり取りも、LinkedInで続けられます。準備は「海外展示会の選び方・出展準備の流れ」で解説しています。
- 現地法人: 外資の会社(PT PMA)の出資の制限や資本金などの条件は、見直されることもあります。売上の見込みが立ってから、専門家に相談して形を選びます。相談先の使い分けは「海外進出・海外展開の支援の選び方」で比べています。
まず日本から直接声をかけて反応を見て、相手が商社を通したいと言えば商社を、地場企業に広げるなら代理店と展示会を足すのが、負担の小さい順番です。買い手を見つける方法の全体は「海外バイヤーの見つけ方・探し方」で解説しています。
輸入の規制と認証:売る前に確かめる入口
インドネシアは、品目ごとに輸入の制限や認証が細かく決まっていて、制度の見直しも続いています。受注した後で「輸入できない」と分からないよう、見積もりの前に次の5つを確かめます。
| 確かめること | 中身 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 品目の分類(HSコード) | 関税、輸入の制限、認証は、この番号で決まる | 通関業者に確かめる |
| 輸入の制限 | 中古の機械などの資本財、鉄鋼・鉄鋼製品などは、輸入業者の登録や輸入の承認が要る | インドネシアのナショナル・シングル・ウィンドウ(INSW)でHSコードから調べ、買い手にも聞く |
| 国の規格(SNI) | 取得が義務の製品は、輸入の前に認証を取り、登録と表示をする | 国家標準化庁(BSN)の情報と、買い手・代理店に確かめる |
| ハラル | 食品・飲料、医薬品、化粧品、化学品、日用品などに、品目ごとの段階で認証の義務が広がっている | ハラル製品保証実施機関(BPJPH)の案内で確かめる |
| 製品の登録 | 食品・医薬品のほか、感電のおそれがある一部の電気製品なども、売る前に登録が要る | 買い手・代理店と、通関業者に確かめる |
- 輸入者は誰か: インドネシアで輸入できるのは、事業基本番号(NIB)を持ち、輸入業者として認められた会社です。輸入の資格は、自社の生産に使う分を輸入する製造業向けと、売るために輸入する商社・販売店向けに分かれています。日本から直接売るときは、買い手が自社で輸入するのか、商社や販売店を通すのかを、最初の見積もりの前に聞きます。
- ハラル: 根拠はハラル製品保証法(2014年第33号)で、対象は品目ごとの段階で広がり、期限は2034年まで続きます。ハラルでない材料を使う製品には、その表示が求められます。最新の扱いはBPJPHの案内で確かめます。
- 協定と関税: 日・インドネシア経済連携協定(2008年)のほか、日本とASEANの協定やRCEPなど、使える協定が複数あります。品目と原産地の条件で税率が変わるので、HSコードとあわせて通関業者に確かめます。
- 日本側の輸出管理: 製品や技術によっては、日本からの輸出に経済産業大臣の許可が要ります(安全保障貿易管理)。図面や技術資料をメールで送ることも対象になりえます。経済産業省の案内で確かめます。
品目によっては、船積みの前の検査が求められることもあります。
- 1日本側で
確かめる HSコードを通関業者に確かめる使える協定と、関税の税率輸出管理:経済産業大臣の許可が要るか - 2インドネシアの
制度で INSWで、HSコードから輸入の制限を調べるSNI:取得が義務の製品かハラル:BPJPHの案内で確かめる製品の登録:売る前に要るか確かめる - 3買い手・
代理店に 輸入は自社でするか、商社・販売店を通すか輸入の資格を持っているか認証や製品の登録を誰の名前で取るか聞く
日本からLinkedInでインドネシアの決裁者に会う手順
LinkedInは仕事のためのSNSで、200以上の国と地域で14億人以上が登録しています(About LinkedIn)。勤務地と役職名まで分かるので、カラワンの工場の購買責任者や、地場企業のPresident Directorを、日本から探して声をかけられます。
- 1Indonesiaから
地域を ジャカルタと、絞る 西ジャワ州・ Indonesia東ジャワ州など - 2Pak・Ibuを
つけて President Director・工場長・購買の申請 責任者に Hi Pak Budi, - 3返信は
2〜3日以内 3〜4回のやり取りで、 Thank you for connecting資料の 送付や オンラインの 面談へ - 4面談で
決める SNI・人と 輸入者を 聞く ハラルなどの 面談認証と、 今の 仕入れ先も - 5出張の
前に 渋滞が会う 約束を 取る 多いので、 出張1日に 回る 件数を 詰め込みすぎない
1. Sales Navigatorで、地域・業界・役職から絞る
Sales Navigator(LinkedInの営業向けの有料版)では、次の条件を組み合わせます。
- 地域: Indonesia全体から始め、ジャカルタと、工業団地の多い西ジャワ州(ブカシ県・カラワン県)、東ジャワ州(スラバヤ)などに絞る
- 業界と会社の規模: 貴社の製品を使う業界(自動車・二輪の部品、電機、食品など)と、従業員数
- 役職名のキーワード: President Director、Director、Factory Manager、Plant Manager、Purchasing Manager、Procurement Manager、Engineering Managerなど
- 日系企業: アカウント検索で本社所在地を日本にして会社を保存し、リード検索でそのリストに絞って、地域をIndonesiaにする。手順は「LinkedIn Sales Navigatorで見込み客を探す方法」で解説しています
条件ごとの人数は、1か月の無料トライアルの間に確かめてから計画を立てます。国・業界・役職の決め方は「LinkedIn海外営業のターゲット設定」、機能の全体は「LinkedIn Sales Navigatorとは?」で解説しています。
2. プロフィールを整え、申請と最初の1通を送る
申請の前に、プロフィールの見出しと自己紹介を英語にし、何をつくる会社で、インドネシアのどんな工場の役に立つのかが分かるようにします。インドネシア語でも見せたいときは、別の言語のプロフィールを足せます(LinkedInヘルプ「別言語のプロフィールを作成・削除する」)。こちらもネイティブに書いてもらいます。
承認される割合は、ざっくり2〜6割で、国や相手でかなり変わります。アジアは3〜6割を狙え、アメリカ・ヨーロッパは渋めで2〜4割です。申請は1日10〜15分ほどで回せます。申請に添える文は相手ごとに合わせるのが理想ですが、書けずに止まるより、メッセージなしでも送るほうがよいです。国ごとの反応の比べ方は「LinkedIn海外営業の国別の反応」で解説しています。
インドネシアでは、男性の名前の前にPak、女性の名前の前にIbu(Bu)をつけて呼ぶのが丁寧です。産業用ポンプのメーカーが、カラワンの部品工場の工場長に送るなら、次のように短く書きます。
- 申請に添える文:Hi Pak Budi, I’m with a Japanese maker of industrial pumps for parts plants. I noticed your factory in Karawang, so I’d like to connect.
- つながった後の最初の1通:Thank you for connecting, Pak Budi. Our pumps help stamping lines cut unplanned stops. I can send a one-page overview, and a 20-minute online call could follow if it looks useful.
場面ごとの英文の型は「LinkedInの英語メッセージ例文集」にまとめています。
3. つながった後:早く返し、決める人と輸入者を確かめる
返信が届いたら2〜3日以内に返し、3〜4回のやり取りで、資料の送付やオンラインの面談につなげるのが目安です。ジャカルタは日本より2時間遅く(国内に3つの時間帯があり、夏時間はなし)、ジャカルタの朝9時が日本の11時です。時差の合わせ方は「LinkedIn投稿時間の決め方」にまとめています。
- 面談で聞くこと: 誰がどこで決めるか(インドネシア・日本の本社・地域の拠点)、輸入は自社でするか、商社・販売店を通すか、求められる認証(SNI・ハラルなど)、今の仕入れ先
- 連絡の手段: 相手がWhatsAppなどのメッセージアプリを使いたいと言えば合わせ、決まったことはメールでも残す
- 会社の資産にする: つながった相手を、自社の企業ページのフォローに招待する
- 会いに行く: 出張の前に会う約束を取る。ジャカルタの周辺は渋滞が多いので、1日に回る件数を詰め込みすぎない
- 手が回らないとき: 委託で始めて、成果の出た地域から社内に移す
「返事が来たら、すぐに対応できるか心配」というご相談もあります。インドネシアに限った話ではありませんが、LinkedInのメッセージは、WhatsAppのようなメッセージアプリほど即答を求められない、とお答えしています。
インドネシア向けの営業で気をつけたいこと
- 支払条件: 初めての相手との取引では、前払いの割合や、信用状(L/C。買い手の銀行が支払いを約束する仕組み)など、代金を回収する方法を出荷の前に決めます。
- 休みの時期: イスラム教の断食月(ラマダン)と、明けの大祭(レバラン)の前後は休む会社が多く、返事や出荷が止まりがちです。日付はイスラムの暦に合わせて毎年変わるので、その年の日付を確かめて予定を組みます。
- 金曜の昼: 礼拝の時間にあたるので、面談は避けます。
- 担当の交代: 駐在員の帰任や転職で、担当が替わることがあります。1社につき複数の人とつながり、やり取りの記録を残します。
まとめ
- インドネシアの販路開拓は、買い手がどこに集まり、誰が決めるかをつかむところから始める
- 買い手は日系企業の現地法人と地場企業が中心。日系の工場は、ジャカルタの東のブカシ県・カラワン県などの工業団地に多い
- 入り方は、直接・商社・代理店・展示会・現地法人の5つ。日本から直接声をかけて反応を見て、相手の求めに合わせて足す
- 輸入の制限・SNI・ハラル・製品の登録と、誰が輸入者になるかを、見積もりの前に確かめる
- LinkedInでは、地域・業界・役職で決裁者を探し、早く返して、面談で決める人と輸入者を確かめる
COSPALinksは、LinkedInを使った海外営業を支援しています。狙う国と相手の決め方から、商社や代理店と組み合わせた進め方までを、資料ライブラリにまとめています。
よくある質問
Aできます。日本から声をかけるときは英語で始め、相手が日本人の駐在員なら日本語で構いません。英語の文はAI翻訳で下書きを作り、名前・会社名・数字を見直してから送ります。インドネシア語の資料が要るときは、ネイティブに書いてもらいます。
A売れます。日本から直接輸出する、商社を通す、代理店・販売店に任せる、といった形があります。ただし輸入者になるのは買い手か代理店なので、相手が輸入の資格を持っているかを確かめます。現地法人は、売上の見込みが立ってから考えます。
A先に、貴社の製品が対象かどうかを確かめます。対象なら、取るまでの期間を納期の見通しに入れ、買い手や代理店と、誰の名前で取るかを決めます。対象でないなら、そのことを提案の資料に書いておくと、相手の確認が早く進みます。
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