タイで
この記事でわかること
- タイのBtoBの買い手の3つの種類と、それぞれの特徴
- 直接・商社・代理店・現地法人の4つの入り方と、決める人がいる場所の見分け方
- 日本からLinkedInでタイの決裁者を探して会う手順と、気をつけたいこと
タイの販路開拓は「誰が、どこで決めるか」をつかむところから
タイで売り先を探すときに、最初に見たいのは国の魅力より、買い手の顔ぶれです。タイでは、地場の企業や欧米・中国などの外資の工場と並んで、日系企業の工場や販売会社が大きな買い手になっています。そして、決める人がタイにいるとは限りません。日本の本社や、東南アジアをまとめる地域の拠点で決まる買い物もあります。
外務省の「タイ王国基礎データ」から、売り先として見るときに押さえたい点を3つ挙げます。
- 製造業が経済の柱: 製造業がGDPの約30%を占めます。主な輸出品は、自動車・同部品、自動データ処理装置・同部品です(2024年、タイ商務省)。
- 日系企業が多い: タイに進出している日系企業は6,083社、在留邦人は70,421人です(どちらも2024年)。
- 日本との取引が多い: 2024年のタイの輸出先で日本は3位(7.7%)、輸入元では2位(9.4%)です。日タイ経済連携協定(JTEPA)は2007年11月に発効しています。
日系企業の多さは、買い手が多いことを示すと同時に、日本製品と比べられる相手がすでに現地にいることも意味します。この記事は、タイに売ると決めた会社や、タイから引き合いがある会社に向けて書いています。東南アジアのどの国から始めるかは「ベトナム・東南アジアの販路開拓」、インドは「インドビジネスの始め方」、販路開拓の方法の比べ方の全体は「海外の販路開拓とは?」で解説しています。
タイのBtoBの買い手は3つに分けて考える
タイで製品を買う会社は、大きく3つに分かれます。どれに売るかで、会う相手も、話の進み方も変わります。
- 日系企業の
現地法人 工場・販売会社タイの現場 現地の社長・工場長と、 タイ人の 購買・技術の 管理職 日本の本社 設計や品質の 部門が、 部品や 材料を 指定している こともある - タイの
地場企業 タイの現場 オーナーや経営陣が 最後に 決める ことが 多い - 欧米・中国などの
外資の 工場 地域の拠点 本国の本社や 地域の 拠点が、 調達先を 決める こともある
| 買い手 | 決める人と場所 | 営業での対応 |
|---|---|---|
| 日系企業の現地法人(工場・販売会社) | 現地の社長・工場長と、タイ人の購買・技術の管理職。部品や材料を日本の本社が指定していることもある | タイの現場と日本の本社の両方に話を通す |
| タイの地場企業 | オーナーや経営陣が最後に決めることが多い | 担当者と話しながら、経営陣に会う機会をつくる |
| 欧米・中国などの外資の工場 | 本国の本社や地域の拠点が、調達先を決めることもある | 地域の拠点や本社の調達の担当にも会う |
日系企業の現地法人:「本社の指定」か「現地で選ぶ」かを見分ける 日系の工場では、日本の本社の設計で、使う部品や材料が決まっていることがあります。この場合、タイの購買担当が気に入っても、本社の設計や品質の部門が認めなければ切り替わりません。反対に、費用を下げるために現地で仕入れ先を探している会社では、タイの購買や技術の管理職が候補を選びます。最初の面談で「この部品は、どこで、誰が決めていますか」と聞き、必要なら日本の本社の担当にも会います。
社長や工場長が、日本から赴任した駐在員であることも多くあります。駐在員は数年で替わることがあるので、タイ人の管理職ともつながっておくと、担当が替わっても話が途切れません。
タイの地場企業:顔を合わせ、関係を積み上げる 知らない会社からの連絡に、すぐ返事が来るとは限りません。担当者との話が進んでも、最後はオーナーや経営陣が判断することがあります。早めにオンラインで顔を合わせ、出張や展示会の機会に会いに行きます。
比べられる相手:タイにすでにある日系メーカー タイには、日系の部品メーカーや商社がすでに多くあります。日本から輸入する製品は、価格だけでなく、現地の在庫、納期、故障したときの対応で、こうした会社と比べられます。誰が保守を受け持つのか、部品を何日で届けられるのかを、最初の提案で示せるようにします。
言葉:英語で始め、相手に合わせる タイの言語はタイ語で、英語で仕事をする人もいれば、タイ語でのやり取りを好む人もいます。日本から声をかけるときは英語で始め、相手が日本人の駐在員なら日本語で構いません。英語のやり取りは、AI翻訳で壁が大きく下がりました。一方、英語以外の言語は、ネイティブが書かないと不自然になります。タイ語の資料を作るときは、ネイティブに書いてもらいます。
タイへの4つの入り方(直接・商社・代理店・現地法人)
タイに売る入り方は、主に4つです。
| 入り方 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 日本から直接売る(直接輸出) | 仕様の相談が要る製品。決裁者と直接話したい | 輸出の手配、代金の回収、故障への対応を自社で用意する |
| 商社を通す(日本の商社・タイにある日系商社) | 買い手が取引のある商社を通して買いたい。輸出の実務を任せたい | 買い手の声が届きにくい。商社の中で後回しにならないか |
| タイの代理店・販売店 | 在庫・配送・保守を現地で任せたい。地場企業に広く売りたい | 日系向けと地場向けで得意な会社が違う。任せる地域と顧客を決める |
| 現地法人・駐在員事務所 | 売上の見込みが立ち、在庫や技術の担当を現地に置きたい | 外資の規制で、できる事業と手続きが変わる。最初の一歩には重い |
- 日本から直接売る: 仕様の相談から自社で受け持てるので、技術の強みを伝えやすい形です。輸出の手続きと代金の回収の基本は「海外営業とは?仕事内容・国内営業との違い」にまとめています。
- 商社を通す: 日系の工場は、新しい仕入れ先と取引を始める(取引の口座を開く)より、すでに取引のある商社を通して買うほうを選ぶことがあります。その場合は商社を入口として使い、買い手との技術の話は自社でも続けます。商社の側から売り先を探す方法は「商社の海外新規開拓にLinkedInを使う方法」で解説しています。
- タイの代理店・販売店: 候補の探し方と選び方は「海外代理店の探し方・見つけ方」で解説しています。契約では、任せる地域(タイ全土か、東部などの一部か)と、日系企業への販売も任せるかを決めます。決め方は「海外代理店契約の基本」にまとめています。
- 現地法人・駐在員事務所: タイの外国人事業法は、外国資本が50%以上の会社を外国企業とし、卸売業・小売業やサービス業の多くを、許可が要る業種に挙げています。タイ投資委員会(BOI)の奨励を受けると、扱いが変わる場合もあります。会社をつくることと、売り先をつくることは別の仕事です。売上の見込みが立ってから、専門家に相談して形を選びます。支援の使い分けは「海外進出・海外展開の支援の選び方」で比べています。
最初から現地法人をつくる必要はありません。まず日本から直接声をかけて買い手の反応を見て、相手が商社を通したいと言えば商社を、地場企業に広げるなら代理店を加えます。展示会や商談会など、買い手を見つける方法の全体は「海外バイヤーの見つけ方・探し方」で解説しています。
決める人はどこにいるか:タイ・日本の本社・地域の拠点
同じタイの工場への売り込みでも、決める人がいる場所は3つに分かれます。
| 決める場所 | よくある場面 | 見分け方と会う相手 |
|---|---|---|
| タイの現地法人・地場企業 | 現地で仕入れ先を選ぶ部品・設備・消耗品。地場企業の購買 | 役職名と勤務地がタイ。購買・技術・工場の管理職に会う |
| 日本の本社 | 日系の工場で、本社の設計や品質の部門が部品・材料を指定している | 面談で決め方を聞く。本社の設計・購買の担当にも会う |
| 地域の統括拠点 | 東南アジアの調達や販売を1か所でまとめている。タイの拠点が近くの国を見ていることもある | 役職名にSoutheast AsiaやAPACが入る。拠点の調達の担当に会う |
どこで決まるかは、外から見ただけでは分かりません。LinkedInのプロフィールの役職名と勤務地で見当をつけ、最初の面談で確かめます。タイの購買担当と日本の本社の設計担当のように、2か所の人が関わるときは、両方に同じ資料を渡し、話の食い違いを防ぎます。
- 1タイで
会う 購買・技術の管理職に 会う - 2決め方を
聞く 「どこで、誰が 決めていますか」 - 3見分ける本社の
指定なら 日本の本社の 現地で設計・品質の 担当にも 会う 選ぶなら タイの購買・技術の 管理職が 候補を 選ぶ - 4商社を
通すか 商社を通して 買うかを 聞く - 5試作・評価へ進め方と
期間を 確かめる
Sales Navigatorでは、本社が日本にある会社の、タイで働く人だけを探すこともできます。アカウント検索で本社所在地(Headquarters location)を日本にして会社を保存し、リード検索でその会社のリストに絞って、地域をタイにします。2つの検索の条件の違いは「LinkedIn Sales Navigatorで見込み客を探す方法」で解説しています。
日本からLinkedInでタイの決裁者に会う手順
LinkedInは仕事のためのSNSで、200以上の国と地域で14億人以上が登録しています(About LinkedIn)。部署や役職、勤務地まで分かるので、タイの工場の購買責任者や、日系の現地法人の社長を、日本から探して声をかけられます。代理店や商社の候補の責任者を探すときにも使えます。
- 1会社を
保存する アカウント検索で本社所在地を 日本日本に して、 会社を 保存 - 2地域を
タイに リード検索でする その Sタイ会社の リストに 絞り、 地域を タイに - 3両方に
申請する 日本人の駐在員と、 Sつながるタイ人の 管理職の 両方に 送る - 4早く
返す 返信が届いたら、 Thanks for connecting, Somchai.2〜3日以内に 返す - 5面談で
聞く 誰がどこで 面談決めるか (タイ・ 日本の 本社・地域の 拠点)
1. Sales Navigatorで、地域・業界・役職から絞る
Sales Navigator(LinkedInの営業向けの有料版)では、次の条件を組み合わせます。
- 地域: Thailand全体から始め、工場の多いバンコクの周辺や、東部のチョンブリー県・ラヨーン県などに絞る
- 業界と会社の規模: 貴社の製品を使う業界(自動車部品、電子部品、食品など)と、従業員数
- 役職名のキーワード: Managing Director、President、Factory Manager、Purchasing Manager、Procurement Manager、Engineering Managerなど
- 日系企業: 前の章の手順で本社所在地が日本の会社に絞り、日本人の駐在員とタイ人の管理職の両方を見る
狙う相手の人数は、業界と役職で大きく違います。Sales Navigatorは1か月無料で試せるので、その間に条件ごとの人数を確かめてから計画を立てます。人数の確かめ方は「LinkedIn海外営業のターゲット設定」で解説しています。
実際の面談では、狙う業界の人がタイにどれだけいるかを、その場でSales Navigatorに条件を入れて一緒に確かめることがあります。かなり絞った条件で探したときも、声をかけられる相手が見つかりました。
2. プロフィールを整え、つながり申請を送る
申請の前に、プロフィールの見出しと自己紹介を英語にします。何をつくる会社で、タイのどんな工場の役に立つのかが、一目で分かるようにします。タイ語でも見せたいときは、別の言語のプロフィールを足せます(LinkedInヘルプ「別言語のプロフィールを作成・削除する」)。こちらもネイティブに書いてもらいます。
承認される割合は、ざっくり2〜6割で、国や相手でかなり変わります。アジアは3〜6割を狙え、アメリカ・ヨーロッパは渋めで2〜4割です。申請は1日10〜15分ほどで回せます。申請に添える文は相手ごとに合わせるのが理想ですが、文面に悩んで送らないままでいるより、メッセージなしでも送るほうがよいです。
精密治具のメーカーが、ラヨーンの部品工場の購買担当に送るなら、次のように短く書きます。
- 申請に添える文:Hi Somchai, I’m with a Japanese maker of precision jigs for auto parts. I noticed your plant in Rayong, so I’d like to connect.
- つながった後の最初の1通:Thanks for connecting, Somchai. Our jigs help parts plants shorten setup time when models change. I can send a one-page overview, and a 20-minute online call could follow if it looks useful.
相手が日本人の駐在員なら、日本語で「タイ工場の生産技術をご担当と拝見し、ご連絡しました。治具をつくる日本のメーカーで、型替えの時間を短くするご相談を受けています。情報交換ができましたら幸いです。」のように送ります。場面ごとの英文の型は「LinkedInの英語メッセージ例文集」にまとめています。
3. つながった後:早く返し、決める場所を確かめる
返信が届いたら2〜3日以内に返し、3〜4回のやり取りで、資料の送付やオンラインの面談につなげるのが目安です。タイは日本より2時間遅く、夏時間はありません。タイの朝9時は日本の11時なので、日本の午後の時間はすべて相手の業務時間の中に入ります。時差の合わせ方は「LinkedIn投稿時間の決め方」にまとめています。
- 面談で聞くこと: 誰がどこで決めるか(タイ・日本の本社・地域の拠点)、今の仕入れ先と、商社を通して買うか、試作や評価の進め方と期間
- 会社の資産にする: つながった相手を、自社の企業ページのフォローに招待する
- 会いに行く: 出張や展示会の予定ができたら、つながった相手と先に会う約束を取る。準備は「海外展示会の選び方・出展準備の流れ」で解説しています
- 手が回らないとき: 委託で始めて、成果の出た地域から社内に移す
業界と役職で相手を絞った製造業の例では、医療機器・半導体向けの精密金型をつくる狭山金型製作所が、R&Dの責任者や技術リーダーに的を絞り、1か月で新しい接点217件、有望リード15件、資料請求などの具体的な動き6件につなげています。流れの全体は「LinkedIn海外営業とは?Sales Navigatorで海外顧客を開拓する方法と成功事例」で解説しています。
タイ向けの営業で気をつけたいこと
- 支払条件: 初めての相手との取引では、前払いの割合や、信用状(L/C。買い手の銀行が支払いを約束する仕組み)など、代金を回収する方法を出荷の前に決めます。
- 協定と関税: JTEPAのほか、日本とASEANの協定など、使える協定が複数あります。品目と原産地の条件で税率が変わるので、製品の分類番号(HSコード)とあわせて通関業者に確かめます。
- 規格・認証: 製品によっては、タイの規格への適合や認証が求められます。売り始める前に確かめます。
- 輸出管理: 製品や技術によっては、日本からの輸出に経済産業大臣の許可が要ります(安全保障貿易管理)。図面や技術資料をメールで送ることも対象になりえます。経済産業省の案内で確かめます。
- 休みの時期: 4月中旬のタイの正月(ソンクラーン)の前後は休む会社が多く、返事が止まりがちです。日系の現地法人の休日も日本の本社と同じとは限らないので、相手の会社の休みを聞いて予定を組みます。
- 担当の交代: 駐在員が帰任すると、話が振り出しに戻ることがあります。1社につき複数の人とつながり、やり取りの記録を残します。
まとめ
- タイの販路開拓は、買い手が誰で、どこで決めるかをつかむところから始める
- 買い手は、日系企業の現地法人・タイの地場企業・外資の工場の3つ。日本からの製品は、タイにある日系メーカーとも比べられる
- 入り方は、直接・商社・代理店・現地法人の4つ。日系の工場には、取引のある商社を通して売る形もある
- 決める場所は、タイ・日本の本社・地域の拠点のどこか。面談で確かめ、関わる人すべてに話を通す
- LinkedInでは、Sales Navigatorで地域・業界・役職から探し、日系企業は本社所在地と地域を組み合わせる。早く返して面談につなぐ
COSPALinksは、LinkedInを使った海外営業を支援しています。狙う国と相手の決め方から、商社や代理店と組み合わせた進め方までを、資料ライブラリにまとめています。
よくある質問
Aできます。日本から声をかけるときは英語で始め、相手が日本人の駐在員なら日本語で構いません。英語の文はAI翻訳で下書きを作り、名前・会社名・数字を見直してから送ります。タイ語の資料やメッセージが要るときは、ネイティブに書いてもらいます。
A決める場所によります。現地で仕入れ先を選ぶ部品や設備なら、タイの購買・技術の管理職に会います。本社が設計で指定している部品なら、日本の本社の設計・品質の担当にも話を通します。最初の面談で、誰がどこで決めるかを聞いてから進めます。
A売れます。日本から直接輸出する、商社を通す、タイの代理店・販売店に任せる、といった形があります。LinkedInを使えば、日本から決裁者に直接声をかけられます。現地法人は、売上の見込みが立ち、在庫や技術の担当を現地に置きたくなってから考えます。
A引き合いや取引のある国、貴社の製品を使う業界が集まる国から選び、Sales Navigatorで相手の人数を確かめてから決めます。タイは日系企業の工場が多いので、日本での取引先がタイに拠点を持っているなら、そこから話を始めやすい国です。
無料相談(30分・オンライン)
貴社が会える海外の決裁者の数を、その場でお見せします。
狙いたい国・業界・役職を












セミナー10/30(金)11:00〜出版記念セミナー 受付中