海外進出・海外展開の
この記事でわかること
- 海外進出・海外展開の支援の種類と、それぞれの得意なこと
- 市場調査・パートナー探し・顧客探し・契約と物流の段階ごとに合う支援
- 顧客探しを自社の直接アプローチ(LinkedIn)で補い、支援を組み合わせる方法
海外進出・海外展開の支援とは:段階ごとに得意な相手が違う
海外進出・海外展開の支援とは、海外で売る、または海外に拠点をつくるまでの作業を、外部の機関や会社に手伝ってもらうことです。情報の提供や相談、商談の場づくり、現地での手続き、営業の作業の代行まで、中身は相手によって大きく違います。
支援を選ぶときは、どこが有名かより先に、自社がいまどの段階にいて、何が足りないかを決めます。海外展開の段階は、大きく4つに分けられます。
- 市場調査: 国を選び、市場・規制・競合を調べる
- パートナー探し: 代理店・販売店・商社・現地の協力会社を見つける
- 顧客探し: 買い手の会社と担当者を見つけ、商談をつくる
- 契約・物流・代金回収: 見積もりと契約、輸出の手続き、代金の回収
この記事では、中小企業が日本から海外に売り始める・広げる場面を中心に、支援の選び方をまとめます。海外営業の仕事そのものの基本は「海外営業とは?仕事内容・国内営業との違いと、少人数で始める新規開拓の進め方」で解説しています。
海外進出の支援の主な種類と、得意なこと
支援をする側は、大きく8つに分けられます。
| 支援の種類 | 得意なこと | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 国の支援機関 | 国・地域ごとの情報、相談、展示会の共同出展、商談会 | 情報と場づくりが中心。営業の作業の代行はしない |
| 自治体・地域の支援機関 | 地元企業向けの相談、共同出展、融資や助成の制度 | 制度と窓口が地域ごとに違う |
| 商工会議所 | 原産地証明書の発行、相談、セミナー | 個別の営業の作業までは担わない |
| 金融機関 | 送金・信用状・為替予約、海外の情報、商談会 | 得意な国が、拠点と提携先で決まる |
| 民間のコンサルティング会社 | 市場調査、進出の計画、現地法人の設立と手続き | 費用がかかる。得意な国と業種が会社ごとに違う |
| 商社・代理店 | 現地での販売、在庫、物流、代金の回収 | 顧客との関係が相手側に残りやすい |
| 営業代行・運用代行 | 相手探しと声かけの作業を代わりに行う | 成果の定義と、自社への引き継ぎを決めておく |
| 自社で直接動く(LinkedInなど) | 国・業界・役職で相手を選び、日本から声をかける | 担当者と毎日の時間が要る |
国の支援機関
国の支援機関は、国・地域ごとの市場や制度の情報、貿易の相談、セミナーを用意しています。海外の見本市に日本の共同ブースで出る支援、海外のバイヤーとの商談会、専門家が続けて付く伴走型の支援、越境EC(海外の買い手にネットで直接売る方法)の販路づくりもあります。国選びと情報集めの段階で、まず頼りになる相手です。一方で、営業の作業そのものを代わりに行うわけではなく、商談会で会える相手と日にちも決まっています。費用や申し込みの条件は支援の内容ごとに違うので、申し込む前に確かめます。
自治体・地域の支援機関
都道府県や市の産業振興の機関は、地元の中小企業向けに、海外展開の相談窓口、海外の展示会への共同出展、海外展開のための融資の制度などを用意しています。展示会の出展などの費用を助成する制度を設けている自治体もあります。条件と募集の時期は自治体と年度で違うので、地元の窓口で確かめます。
商工会議所
商工会議所は、輸出品の原産地証明書(どの国で作られた品物かを示す書類)を発行しています。輸入する国の通関や、取引先・信用状の条件で求められることがある書類です。海外ビジネスの相談、セミナー、輸出管理の説明会などを行っているところもあり、契約・出荷の段階で身近な相談先になります。
金融機関
取引のある銀行は、外国送金、信用状(L/C。買い手の銀行が支払いを約束する仕組み)、輸出の代金の手形の買い取り、為替予約(将来の為替レートを先に決める取引)など、代金の回収と為替の面で欠かせない相手です。地方銀行の中には、海外に事務所を置いたり現地の銀行と提携したりして、海外の情報の提供、セミナー、商談会を行うところもあります。
民間のコンサルティング会社
民間のコンサルティング会社は、市場調査、進出の計画づくり、現地法人の設立、会計・税務・労務の手続きなど、自社に合わせた支援をします。公的な支援より細かく踏み込めるぶん、費用がかかります。得意な国と業種は会社ごとに違うので、自社の製品と狙う国での実績を確かめます。
商社・代理店
商社は自社の名前で輸出入を行い、物流・在庫・代金の回収の手間と危険を引き受けます。代理店・販売店は、現地で製品を売り、保守を受け持つこともあります。現地の販売網を早く使えるのが強みです。一方で、顧客との関係や市場の声が相手側に残りやすく、利益の一部も渡します。代理店の候補の探し方と選び方は「海外代理店の探し方・見つけ方|LinkedInで候補を探して声をかける手順と、選び方」、輸出の手続きを頼む相手の違いは「輸出代行とは?頼める範囲と選び方」で解説しています。
営業代行・運用代行
営業代行は、海外の見込み客を探して声をかけ、面談の約束を取るところまでを代わりに行います。LinkedInの運用代行のように、特定のツールの運用を任せる形もあります。社内に人手がなくても早く動き始められるのが強みです。頼む前に、何を成果とするか(つながった人数、面談の数など)と、返信のあった相手を自社に引き継ぐ時期を決めておきます。LinkedInを使う代行では、担当者のアカウントに代わりにログインする方法や自動化のツールは、規約に反するおそれがあるので、やり方も確かめます。LinkedInに限らない海外営業代行のタイプと契約で確かめることは「海外営業代行とは?頼めることと3つのタイプの違い」で解説しています。外注と内製の決め方は「自分でやるか、頼むか|LinkedIn営業の内製と外注の決め方と、内製化の進め方」、費用の内訳は「LinkedIn営業の費用相場|運用代行・営業代行・自社運用の内訳と比べ方」で比べています。
自社で直接動く(LinkedInなどのツール)
自社の担当者が、オンラインで相手を探して直接声をかける方法です。LinkedInなら、国・業界・会社の規模・役職で相手を絞り、日本から声をかけられます。誰が反応したか、何を聞かれたかが、そのまま自社に残ります。担当者と毎日の時間は要りますが、つながり申請なら1日10〜15分ほどから始められます。
段階ごとに合う支援
段階ごとに、主役になる支援が変わります。
- 1市場調査どの
国で、 国・誰に 売るかを 決める 自治体の コンサル金融機関の情報と 相談 セミナー - 2パートナー探し代理店・
販売店・ 公的機関や現地の 協力会社を 見つける 金融機関の コンサル商社自社で商談会 直接 (LinkedIn) - 3顧客探し買い手の
会社と 展示会担当者を 見つけ、 商談を つくる (公的な 営業代行自社で共同出展を 含む) 直接 (LinkedIn) - 4契約・
物流・ 見積もりと代金回収 契約、 金融機関通関業者・輸出の 手続き、 代金の 回収 物流会社 商工会議所商社
| 段階 | 主な課題 | 合う支援 |
|---|---|---|
| 市場調査 | どの国で、誰に売るかを決める | 国の支援機関・自治体の情報と相談、コンサル、金融機関のセミナー |
| パートナー探し | 代理店・販売店・現地の協力会社を見つける | 公的機関や金融機関の商談会、コンサル、商社、自社で直接(LinkedIn) |
| 顧客探し | 買い手の会社と担当者を見つけ、商談をつくる | 展示会(公的な共同出展を含む)、営業代行、自社で直接(LinkedIn) |
| 契約・物流・代金回収 | 見積もりと契約、輸出の手続き、代金の回収 | 金融機関、通関業者・物流会社、商工会議所、商社 |
- 市場調査: 公的な支援がもっとも厚い段階です。国・地域の情報、規制、認証が要るかどうかを、まず公的な情報と相談で確かめます。自社に合わせた深い調査が要るときは、コンサルを使います。
- パートナー探し: 商談会や紹介で候補に会えます。候補が少ないときは、LinkedInで現地の代理店や販売店の責任者を探し、直接話すこともできます。ご相談の中で、東南アジアは現地の仲介役と組まないと売るのが難しい、と考えていた会社には、LinkedInで仲介役になる人と先につながっておけば、出張のときに会いに行ける、とお伝えしました。
- 顧客探し: 展示会は短い期間でまとめて会えますが、費用が大きく、会期の後に連絡しなければ接点は途切れます。費用の一般的な目安は1回300〜600万円ほどで、名刺は約200枚、そのうち見込み客は約2割です。この段階は次の章で詳しく見ます。
- 契約・物流・代金回収: 見積もりの貿易条件と支払条件、輸出の手続きは、取引銀行、通関業者・物流会社、商工会議所に相談しながら進めます。製品や技術によっては、輸出に国の許可が要る(輸出管理)ので、早めに確かめます。
顧客探しは、調査中心の支援だけでは埋まりにくい
海外展開の支援の多くは、情報の提供、相談、商談の場づくりが中心です。国選びやパートナー探しには心強い一方で、顧客探しの段階では次の隙間が残ります。
- 「誰に」までは決めてくれない: 調査で分かるのは、どの国に、どんな業界の買い手がいそうか、までです。どの会社の、どの部署の、誰に声をかけるかは、自社で決めて動く仕事として残ります。
- 会える日と相手が決まっている: 商談会や共同出展は、日にちと参加する相手が決まっています。次の機会までの間に、接点を増やす手段が要ります。
- 顧客の声が自社に届きにくい: 商社や代理店に任せると、買い手の反応や断られた理由が、自社まで上がってこないことがあります。
この隙間を埋めるのが、自社からの直接アプローチです。LinkedInは仕事のためのSNSで、200以上の国と地域で14億人以上が登録しています(About LinkedIn)。会社名だけでなく部署や役職まで分かるので、調査で絞った国と業界の中から、会いたい担当者を選んで声をかけられます。
LinkedInの役割は、ほかの支援を置き換えることではなく、つなぐことです。
- 調査の仮説を確かめる: 調査で選んだ国と相手に声をかけ、返信や面談の依頼があるかで、狙いが合っているかを確かめます。
- 展示会・商談会の前後をつなぐ: 会期の前に会う約束を取り、会った相手とはつながって、会期の後も連絡を続けます。
- 代理店の候補に直接話す: 候補の会社の責任者を探し、紹介を待たずに話を始めます。
COSPALinksの支援でも、LinkedInで声をかけ始めてから最初の3か月ほどは、国・業種・製品の組み合わせを広めに試す検証の期間にしています。国は3か月ほどの単位で入れ替えることもあります。調査で立てた仮説を、実際に声をかけたときの反応で確かめる形です。
声をかけるのは企業ページではなく、担当者本人の個人アカウントです(企業ページからは、つながり申請もメッセージも送れません)。たとえば京都グレインシステムは、LinkedInを一から使い始め、海外のR&D(研究開発)の担当者層に直接声をかけて、短い期間で接点と有望な見込み客をつくりました(京都グレインシステムの導入事例)。
LinkedInでつくれるのは、商談のきっかけまでです。見積もり・契約・輸出の手続きは、前の章の支援と組み合わせて進めます。また、中国本土ではLinkedInを公式には使えないので、別の手段を使います。進め方は「LinkedIn海外営業とは?Sales Navigatorで海外顧客を開拓する方法と成功事例」、業種ごとの使い方は、製造業なら「製造業のLinkedIn活用|設計者・開発者に届く海外営業と、Sales Navigatorの絞り込み方」、商社なら「商社の海外新規開拓にLinkedInを使う方法|売り先と仕入れ先を探す海外営業の進め方」にまとめています。
支援の組み合わせ方
1つの支援にすべてを頼まず、段階ごとに主役を決めて組み合わせます。どの組み合わせでも、顧客との関係と反応の記録は自社に残します。
- 初めて
海外に 売る 国を絞り、 公的な反応を 見てから 足す 情報と LinkedInで、相談で、 1〜2か国に 絞る 買い手や 反応の代理店の 候補に 声を かける よい 受注が国で、 展示会や 代理店を 足す 見えたら、 支払条件と 出荷の 準備 - 代理店や
商社を 通して 売っている 今の販路は 主な残し、 顧客と 接点を 持つ 顧客とは、 新しい自社も 接点を 持つ 国では、 代理店に代理店の 候補と 買い手を 自社で 探す 任せる 国と、 自社で 売る 国を 分ける - 社内に
人手が 足りない 作業は任せ、 相手探しと商談は 社内で 受ける 声かけは、 返信の営業代行・ 運用代行に 任せる あった 成果の相手と、 社内で 商談する 出た 地域から、 作業を 社内に 移す
初めて海外に売る会社
- 国の支援機関や自治体の情報と相談で、国を1〜2か国に絞る
- LinkedInで、その国の買い手の担当者や代理店の候補に声をかけ、反応を見る
- 反応のよい国で、展示会(共同出展を含む)や代理店など、費用の大きい方法を足す
- 受注が見えたら、取引銀行・通関業者・商工会議所と、支払条件と出荷の準備を進める
ご支援した会社の海外の拠点でも、まずマーケティングの部門でLinkedInを試して手応えをつかみ、見込みの高い相手が固まってから、販売店やパートナーの会社を巻き込む進め方を選びました。先に自社で反応を確かめておくと、どの国で、どの相手と組むかを決めやすくなります。
代理店や商社を通して売っている会社
今の販路は残したまま、主な顧客とは自社も接点を持ちます。新しい国では、代理店の候補と買い手の両方を自社で探し、代理店に任せる国と自社で売る国を分けます。
社内に人手が足りない会社
相手探しと声かけは営業代行・運用代行に任せ、返信のあった相手との商談は社内で受けます。LinkedInなら、委託で始めて、成果の出た地域から作業を少しずつ社内に移します。
実際のご相談でも、「最後は社内でできるようになるのか」はよく聞かれます。COSPALinksでは、最初の3か月ほどは一緒に動いて、狙う相手の決め方、声をかける相手のリスト、メッセージの文面を作ります。定例の打ち合わせで結果を見ながら進め方を覚えてもらい、そのうえで作業を社内の担当者に移していきます。
販路そのもの(展示会・代理店・越境EC・LinkedIn)の組み合わせ方は「海外の販路開拓とは?新規開拓の方法・進め方と、販路の選び方」で比べています。
支援先を選ぶときに確かめたい5つのこと
- どの段階の支援か: 自社に足りないのが情報か、相手か、手続きかを先に決め、その段階に強い相手を選びます。
- 誰が手を動かすか: 助言と情報だけか、調査・声かけ・手続きの作業まで行うかを確かめます。
- 顧客との関係が誰に残るか: 会った相手の連絡先、やり取り、断られた理由が自社に残るかを確かめます。
- 何を成果とするか: 報告書、紹介の件数、面談の数など、どこまでを約束するのかを契約の前に決めます。
- 得意な国・業種と費用の形: 狙う国と自社の業種での実績、費用の形(無料・固定・成果報酬)と期間を確かめます。
「誰が手を動かすか」は、支援がどこで終わるかも含めて確かめます。代理店探しのご相談で、「商談になったら、支援会社が間に入るのか」と聞かれたことがあります。COSPALinksでは、候補を見つけて貴社とつなぐところまでで、商談の間には入らない、とお答えしました。どこまでを任せ、どこからを自社で持つのかを、頼む前に確かめておきます。
支援の現場では、面談1件ごとに払う成果報酬型のアポイント代行と比べたい、というご相談もあります。COSPALinksでは、成果報酬型のアポイントは会う相手の質が下がりやすいこと、LinkedInならつながった相手とやり取りの記録が貴社に残ることをお伝えしています。
支援する側が「合わない」と言うかどうかも、見ておきたい点です。COSPALinksでも、狙う国と業界に声をかけられる相手が少なすぎるときは、人数をお見せしたうえで、ご依頼をお勧めしないことがあります。起業したばかりの会社にも、代行の費用に見合いにくいと率直にお伝えし、まず自力で試すことをお勧めしています。
海外進出の支援でよくある失敗
- 調査で止まる: 情報を集めても、相手に声をかけなければ顧客は見つかりません。調査と並行して、狙う相手への声かけを始めます。
- 顧客との関係を手放す: 代理店や代行に任せたままだと、見直すときに何も残りません。主な顧客とは自社も接点を持ちます。
- 契約と代金回収を後回しにする: 引き合いが来てから支払条件や輸出の手続きを調べると、返事が遅れます。取引銀行と通関業者には早めに相談します。
まとめ
- 海外進出・海外展開の支援は、種類ごとに得意な段階が違う
- 段階は、市場調査・パートナー探し・顧客探し・契約と物流と代金回収の4つ
- 公的な支援は情報と場づくり、金融機関と商工会議所は代金と書類、コンサルは個別の計画、商社・代理店は現地の販売、営業代行は作業の代わり
- 顧客探しは、調査中心の支援だけでは埋まりにくい。LinkedInなどで自社から声をかけ、ほかの支援とつなぐ
- 支援先は、段階・誰が手を動かすか・顧客との関係が残るか・成果の定義・得意な国と費用の形で選ぶ
COSPALinksは、LinkedInを使った海外営業を支援しています。狙う国と相手の決め方から、展示会や代理店と組み合わせた進め方までを、資料ライブラリにまとめています。
よくある質問
A国がまだ決まっていないなら、国の支援機関や自治体、商工会議所の相談窓口で、情報と進め方を確かめるのが近道です。国と相手がある程度決まっているなら、相談を重ねるより、狙う相手に声をかけ始めるほうが早く手応えが分かります。支払いや出荷のことは、取引銀行と通関業者に相談します。
Aコンサルティング会社は、調査や計画づくり、進出の手続きを支援します。営業代行は、見込み客を探して声をかける作業を代わりに行います。前者は「何をするか」を決める段階、後者は「顧客を見つける」段階に向いています。
A少なくとも1人は要ります。どの国を狙うか、見積もりと条件をどうするか、商談で何を話すかは、自社でしか決められません。作業の一部を外に任せても、返信のあった相手との会話と顧客との関係は、社内の担当者が持ちます。
A公的な支援や調査で国と業界を絞り、その中の担当者にLinkedInで声をかけます。展示会や商談会の前に会う約束を取り、会った相手とはLinkedInでつながって、会期の後も連絡を続けます。
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