海外営業とは、
この記事でわかること
- 海外営業の仕事内容と、国内営業との違い
- 海外の顧客を見つける5つの方法の比べ方
- 少人数で海外営業を始めるときに必要なものと、よくある失敗
海外営業とは:海外の企業に売り、代金を回収するまでの仕事
海外営業とは、海外の企業や販売店に、自社の製品・サービスを売る仕事です。買い手を探して商談し、見積もりと取引条件を決め、輸出の手配をして、代金を回収するところまでを受け持ちます。
働き方は大きく2つあります。
- 日本から海外とやり取りする: 日本の本社にいて、メールやオンラインの面談、出張で海外の相手と商談します。海外に拠点のない会社は、この形から始めます。
- 現地に駐在する: 海外の拠点に赴任し、現地の顧客を担当します。
始めるときに大切なのは、国と相手を絞り、会う方法を決めて続けることです。この記事では、海外営業を始める・立て直す会社の側から、仕事の中身と進め方をまとめます。
海外営業の主な仕事内容
海外営業の仕事は、次の4つに分けられます。
- 1買い手を
探す 展示会代理店オンライン狙う国と 業界を 決め、 会社と 担当者を 探す - 2見積もりと
取引条件 貿易条件通貨支払条件条件をそろえて 見積もる - 3輸出と
代金の 通関信用状輸出管理通関や回収 船積みを 頼み、 回収できない 危険を 小さく する - 4受注後の
フォロー 問い合わせ・不具合・ 追加注文に 応える
1. 買い手を探す
狙う国と業界を決め、製品を使いそうな会社と、その中の担当者を探します。展示会で会う、代理店を通す、オンラインで自分から声をかけるなど、方法はいくつかあります(この後の章で比べます)。会った相手から、現地の市場や競合の様子を聞くことも大事な仕事です。
2. 見積もりを出し、取引条件を決める
海外向けの見積もりは、国内の価格表をそのまま出すのではなく、次の条件をそろえて作ります。
- 貿易条件: 運賃・保険・通関の費用をどこまで売り手が持ち、どこで荷物の危険が買い手に移るか
- 通貨と有効期限: 円か外貨か。外貨なら、使った為替レートと見積もりの有効期限を書く
- 最低の注文数・梱包・支払条件
貿易条件には、国際商業会議所(ICC)が定める「インコタームズ」という共通のルールがあります。EXW(工場渡し)、FOB(本船渡し)、CIF(運賃保険料込み)、DAP(仕向地持込渡し)など11の規則があり、船で運ぶときだけに使うもの(FOB・CIFなど)と、どの輸送手段にも使えるもの(EXW・DAPなど)に分かれます。
インコタームズが決めるのは、費用の分け方、危険が移る場所、売り手と買い手それぞれの義務です。代金の額や支払い方法、所有権がいつ移るかは決めていないので、契約書で別に決めます。使うときは「インコタームズ2020」のように、版も契約書に書きます。規則の一覧はICCの公式ページで確かめられます。11の規則の違いと、見積もりでの選び方は「インコタームズ(貿易条件)の選び方」で解説しています。
3. 輸出の手配と代金の回収
受注したら、輸出の手続きと代金の回収を進めます。
- 輸出の手続き: 税関への輸出の申告と許可(通関)や船積みは、通関業者や物流会社に頼むのが一般的です。船で送ると、船会社が船荷証券(B/L。荷物を受け取る権利を示す書類)を出します。
- 代金の回収: 主な方法は、銀行からの送金(前払い・後払い)、信用状(L/C。買い手の銀行が支払いを約束する仕組み)、D/P・D/A(買い手が銀行で代金を払うか手形の支払いを約束すると、荷物を受け取るための書類が渡る方法)です。後払いの送金には、支払いの約束がありません。初めての相手とは、前払いの割合を増やす、信用状を使う、貿易保険を検討するなどして、回収できない危険を小さくします。
- 輸出管理の確認: 製品や技術によっては、輸出に経済産業大臣の許可が要ります(安全保障貿易管理)。図面や技術資料をメールで送ることも対象になりえます。当てはまるかどうかは輸出する側が判断するので、経済産業省の案内で早めに確かめます。
初めて輸出するときの手順と、直接輸出・間接輸出の違いは「海外輸出の始め方」にまとめています。
4. 受注後のフォロー
納品後の問い合わせ、不具合への対応、部品や消耗品の追加注文、次の案件の相談に応えます。現地で修理や保守が要る製品は、代理店や現地の協力会社と役割を分けておきます。次の注文や紹介につながるかは、受注後の対応で決まります。
国内営業との違い
国内営業と比べると、次の点が違います。
| 項目 | 国内営業 | 海外営業 |
|---|---|---|
| 言葉 | 日本語 | 英語が中心。相手の国の言葉が要ることも |
| 時間 | 同じ時間帯 | 時差があり、返事が翌日になりやすい |
| 取引条件 | 慣れた条件で進む | 貿易条件・通貨・支払条件を相手ごとに決める |
| 商習慣 | 共通の前提が多い | 決め方・契約書の重み・休みの時期が違う |
| 受注までの期間 | 比べると短い | サンプル・試験・条件の確認が重なり、長くなりがち |
| 法律・手続き | 国内の取引のルール | 輸出の手続き、輸出管理、相手国の規格や認証 |
- 言葉: 英語のやり取りは、AI翻訳で壁が大きく下がりました。名前・会社名・数字だけは必ず見直します。英語以外の言語は、ネイティブが書かないと不自然になります。
- 時差: 相手の業務時間と重なる時間が短いので、返事を後回しにすると会話が冷めます。毎日決まった時間に、届いた連絡に返す習慣をつけます。
- 商習慣: 誰が決めるか、契約書をどこまで細かく作るかは、国や会社で違います。最初の商談で、相手の社内での決め方を聞いておくと進めやすくなります。
- 期間: 受注までが長いので、途中の反応(返信、面談、サンプルの依頼)を記録し、手応えを判断します。
- 法律・手続き: 輸出の手続きと輸出管理に加えて、相手国の規格や認証が要る製品もあります。売れるかどうかの前に、輸出してよいか、相手国でそのまま使えるかを確かめます。
受注までの期間について、COSPALinksがご支援する中で見えているのは、段階が進むほど時間がかかることです。つながりは始めた月から増えますが、返事をもらう、商談にする、と進むにつれて難しくなります。受注は長期戦と考えて、段階ごとの進み具合を見ていきます。
海外の顧客を見つける5つの方法
海外の顧客を見つける方法は、主に5つです。相手が来るのを待つ方法と、こちらから相手を選んで動く方法があります。手段の役割分担と見る数字は「海外マーケティングとは?BtoBの進め方」で解説しています。
| 方法 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 展示会 | 実物を見せたい。短い期間でまとめて会いたい | 費用が大きい。会期の後に連絡しないと接点が途切れる |
| 代理店・商社 | 現地での販売・在庫・保守を任せたい | 顧客との関係が相手側に残りやすい |
| 越境EC(海外の買い手にネットで直接売る) | 説明がなくても選ばれる、単価が低めの商品 | 仕様の相談が要るBtoBの製品は売りにくい |
| 現地法人(海外に自社の会社をつくる) | 売上の見込みが立ち、現地で腰を据えて売りたい | 設立と運営の負担が大きく、最初の一歩には重い |
| オンラインでの直接アプローチ(LinkedInなど) | 国・業界・役職を決めて、会いたい人に先に声をかけたい | 会うまでに時間がかかる。毎日の小さな作業が要る |
費用の一般的な目安として、海外の展示会は1回300〜600万円ほどで、名刺は約200枚、そのうち見込み客は約2割です。LinkedInは、1人とつながるのに約1,000円が目安です。
1つの方法にすべてを賭けず、製品と段階に合う方法を1つ中心に決め、足りない部分を別の方法で補います。製品の性質や海外展開の段階ごとの選び方と組み合わせ方は「海外の販路開拓とは?新規開拓の方法・進め方と、販路の選び方」で比べています。展示会に出るときの事前の準備は「海外展示会の準備は6週間前から」、代理店の探し方は「海外代理店の探し方・見つけ方」で解説しています。
オンラインでの直接アプローチ:LinkedIn LinkedInは仕事のためのSNSで、200以上の国と地域で14億人以上が登録しています。LinkedIn自身も「About LinkedIn」で、世界最大のプロフェッショナルネットワークと紹介しています。会社名だけでなく部署や役職まで分かるので、「東南アジアの食品メーカーの研究開発の担当者」のように、会いたい人を選んで日本から声をかけられます。展示会の前に会う約束を取る、代理店の候補の責任者に直接話す、といった組み合わせにも使えます。進め方は「LinkedIn海外営業とは?Sales Navigatorで海外顧客を開拓する方法と成功事例|国選び・英語・展示会との違い」で解説しています。業種ごとの使い方は、製造業なら「製造業のLinkedIn活用|設計者・開発者に届く海外営業と、Sales Navigatorの絞り込み方」、商社なら「商社の海外新規開拓にLinkedInを使う方法|売り先と仕入れ先を探す海外営業の進め方」にまとめています。
少人数で海外営業を始めるときに必要なもの
大きな部署がなくても、海外営業は始められます。最初にそろえたいのは、次の5つです。
- 狙う国と相手: 国は1〜2か国に絞り、業界と、会いたい人の部署・役職まで決めます。これまでに問い合わせや取引のあった国から選ぶと、判断の材料がそろっています。
- 英語の資料とサイト: 会社案内、製品の用途と仕様、対応できる国、問い合わせ先を英語で用意します。声をかけた相手は、話を聞く前にサイトで貴社を確かめます。
- 見積もりの型: 貿易条件、通貨、有効期限、支払条件、最低の注文数を決めた型を作っておくと、引き合いにすぐ答えられます。
- 相談できる実務の相手: 通関業者・物流会社と取引銀行です。自社の製品が輸出管理に当たるかも、早めに確かめます。
- 担当者と、毎日の時間: 兼任でも構いません。返信や記録に使う時間を、毎日決めておきます。
支援の現場では、「誰がやるのか、時間が取れない」というご相談に、つながり申請を1日10〜15分ほどの日課にするようお勧めしています。担当は若手に任せても構いません。
社内だけで回らない作業は、外部に任せる方法もあります。たとえばLinkedInの運用なら、委託で始めて、成果の出た地域から社内に移していく進め方があります。海外営業代行に頼めることと選び方は「海外営業代行とは?頼めることと3つのタイプの違い」で解説しています。公的機関・コンサル・商社など、外の支援の違いと段階ごとの使い分けは「海外進出・海外展開の支援の選び方」で整理しています。
担当者に求められること
- 語学: 英語で要点を短く書けること。AI翻訳を下書きに使えば、得意でなくても始められます。
- 貿易の基礎: 貿易条件と支払い方法の意味を知り、見積もりで説明できること。
- 続ける力: 返事がなくても国や相手を変えて試し、反応を記録して直せること。
- 相手の文化への関心: 相手の国の祝日や商習慣を知り、合わせられること。
「社内に英語のできる人がいない」は、ご相談でよく出る不安です。COSPALinksでは、LinkedInでのやり取りなら、AI翻訳で英文を作り、届いた返事も訳して読む形で始められる、とお伝えしています。英語の得意な人には、商談の段階から加わってもらう形でも進められます。
始める順番
- 1狙う
国と 国は相手を 決める 1〜2か国に 絞り、 会いたい 人の 部署・ 役職まで 決める - 2資料と
見積もりの 会社案内、型を そろえる 製品の 用途と 仕様、 問い合わせ先を 英語で 用意する - 3会う
方法を 毎日・1つ 決める 毎週の 作業に する - 4反応を
記録する 返信・面談・ 見積もりの 依頼を、 国と 相手ごとに 記録する - 5費用の
大きい 反応の方法を 足す よい 国に、 展示会や 代理店を 足す
- 狙う国と相手を決める
- 英語の資料・サイト・見積もりの型をそろえる
- 会う方法を1つ決め、毎日・毎週の作業にする
- 反応(返信・面談・見積もりの依頼)を、国と相手ごとに記録する
- 反応のよい国に、展示会や代理店など費用の大きい方法を足す
海外営業でよくある失敗
- 国を広げすぎる: 一度に多くの国を狙うと、どこで反応があったのか分からなくなります。まず1〜2か国から始めます。
- 展示会に出て終わる: 名刺を交換しても、会期の後に連絡しなければ接点は途切れます。会期の前に会う約束を取り、終わったらすぐに連絡します。
- 代理店に任せきりにする: 顧客との関係が代理店の中だけに残り、見直すときに困ります。主な顧客とは、自社も接点を持っておきます。
- 条件をあいまいにしたまま見積もる: 貿易条件や通貨を書かずに価格だけを出すと、運賃や保険を誰が持つかで、後から食い違いが起きます。
- 支払条件を決めずに出荷する: 初めての相手に後払いで出すと、回収できない危険を売り手が負います。
- 日本語の資料をそのまま訳す: 国内の顧客向けの言い回しは伝わりにくいものです。相手の用途と課題から書き直します。
- 輸出管理を確かめずに資料を送る: 製品だけでなく、図面や技術資料を海外に送ることも、許可が要る場合があります。送る前に当てはまるかを確かめます。
- 返事が遅い: 時差で返事が1日ずつずれると、会話が冷めます。届いた連絡には、日本の業務時間のうちに返します。
まとめ
- 海外営業とは、海外の企業に売り、輸出の手配と代金の回収まで進める仕事
- 主な仕事は、買い手探し、見積もりと取引条件、輸出の手配と代金の回収、受注後のフォロー
- 国内営業との違いは、言葉・時差・貿易条件・商習慣・受注までの期間・輸出の手続き
- 顧客を見つける方法は、展示会・代理店/商社・越境EC・現地法人・オンラインの直接アプローチ。1つを中心にして組み合わせる
- 少人数で始めるなら、国と相手を絞り、英語の資料と見積もりの型をそろえ、毎日の時間を決める
COSPALinksは、LinkedInを使った海外営業を支援しています。狙う国と相手の決め方から、展示会や代理店と組み合わせた進め方までを、資料ライブラリにまとめています。
よくある質問
A同じではありません。海外営業は海外の顧客に売る仕事のことで、日本にいながら担当することもできます。海外駐在は、海外の拠点に赴任して働くことです。海外に拠点のない会社は、日本から海外営業を始め、取引が増えた国に拠点を置くかを考えます。
A始められます。メールやメッセージは、AI翻訳で下書きを作り、名前・会社名・数字を見直せば送れます。オンラインの面談では、要点をまとめた英語の資料を画面に出すと、やり取りを補えます。英語以外の言語で送るときは、ネイティブに書いてもらうか、確かめてもらいます。
A始められます。通関や船積みは通関業者・物流会社に、代金の回収の方法は取引銀行に相談できます。社内で押さえたいのは、見積もりに書く貿易条件(インコタームズ)と支払条件の意味です。ここがあいまいなまま見積もると、後で費用の負担をめぐって食い違いが起きます。
A続けられます。大事なのは、毎日決まった時間を取ることです。国と相手を絞り、会う方法を1つ決めれば、作業は小さく分けられます。たとえばLinkedInでのつながり申請なら、1日10〜15分ほどで回せます。反応のよい国が見えてから、人や予算を足します。
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