BtoBの
この記事でわかること
- 海外マーケティングの意味と、国内との違い、市場と相手の決め方
- 英語サイト・展示会・LinkedIn・広告・メールの役割分担と組み合わせ方
- 段階ごとに見る数字と、少人数での回し方、よくある失敗
海外マーケティングとは:海外の買い手に知ってもらい、商談の入口をつくること
BtoBの海外マーケティングとは、海外の会社の担当者に自社と製品を知ってもらい、調べてもらい、問い合わせや面談まで進んでもらうための活動です。この記事では、中小の製造業・商社が海外の会社に売る場面を扱います。
海外の買い手は、おおむね次の4段階で動きます。
- 知る: 貴社の名前や製品を初めて目にする
- 調べる: サイトや資料、担当者のプロフィールで、信用できる相手かを確かめる
- 話す: 問い合わせる、メッセージに返信する、オンラインで面談する
- 比べる・決める: 見積もりやサンプルを取り、社内で決める
マーケティングが受け持つのは、主に1〜3の「商談の入口」までです。4の見積もりや取引の条件は営業の仕事で、中小企業では同じ人が両方を担うことがよくあります。営業の側の仕事は「海外営業とは?仕事内容・国内営業との違い」で解説しています。
国内のマーケティングとの違い
- 相手は貴社を知らない: 日本での実績や知名度は、海外にはほとんど届きません。何をつくる会社で、誰の役に立つのかを一から伝えます。
- 会う前に、オンラインで調べられる: 距離があるぶん、相手は英語のサイトやLinkedInのプロフィールで貴社を確かめます。英語の情報がないと、比べる候補に入りにくくなります。
- 国ごとに、使う手段と決まりが違う: 使われるSNSや検索の手段、言葉、広告やメールの規則は国で変わります。たとえば中国本土では、LinkedInは公式には使えません。
- 決めるまでに時間がかかり、何人も関わる: 技術・購買・経営など複数の人が関わるので、1回の接点では決まりません。
なお、ネット通販で消費者に売る越境ECや、マッチングサイトに載せて問い合わせを待つ方法は、この記事の主題にしていません。違いと使い分けは「Alibaba・BtoBマッチングサイト・越境ECとLinkedInの違い」で解説しています。
海外マーケティング戦略の立て方:市場と相手を先に決める
手段を選ぶ前に、「どの国の、どんな会社の、誰に、何を伝えるか」を決めます。順番は、国→相手→伝えること→手段の組み合わせ→数字での見直しです。
- 1国を
1〜2か国に 問い合わせや絞る 取引の あった 国、 取引先の 拠点が ある 国から 選ぶ - 2買う
会社と 使う関わる 人を 決める 人・ 買う 人・ 決める 人ごとに、 伝える ことを 分ける - 3伝える
ことを 誰の、英語で 1枚に どんな 困りごとに、 何で 応えるか。 直訳しない - 4置く・届ける
・続けるで 3つの組む 役目に、 それぞれ最低1つの 手段を 持つ - 5段階ごとの
数字で 知る・決め直す 調べる ・話す・ 比べる ごとに、 国と 手段に 分けて 見る
1. 国を1〜2か国に絞る
最初から多くの国に広げると、どの国でも中途半端になります。次の材料から、1〜2か国に絞ります。
- これまでに問い合わせや取引のあった国
- 今の取引先が工場や拠点を持つ国
- 規格・認証・輸入の規制を、自社の製品で満たせる国
- 製品を使う業界が集まっている国
大がかりな市場調査をしなくても、手元の材料で仮説は立てられます。英語サイトのアクセス解析で国ごとの訪問を見る、LinkedInのSales Navigator(営業向けの有料版)で、狙う業界・役職の人が国ごとに何人いるかを数える、といった方法です。Sales Navigatorは1か月の無料トライアルで試せます。国と相手の決め方は「LinkedIn海外営業のターゲット設定」で解説しています。
2. 買う会社と、関わる人を決める
BtoBでは、1社の中で役割の違う人が関わります。誰に何を伝えるかを分けて書き出します。
- 使う人: 技術・開発・生産の担当者。仕様や性能、使い方を知りたい
- 買う人: 購買の担当者。価格、納期、供給の安定、取引の条件を知りたい
- 決める人: 経営者や事業の責任者。導入の効果と危険を知りたい
代理店・販売店を探すなら、相手は経営者や事業開発の責任者です。相手の種類と探し方は「海外バイヤーの見つけ方・探し方」にまとめています。
3. 伝えることを、英語で1枚にまとめる
国と相手が決まったら、「誰の、どんな困りごとに、何で応えるか」を英語で1枚にまとめます。あわせて、相手が確かめたい事実をそろえます。用途、主な仕様、対応できる国、取引の実績がある業界、認証、最小の注文数、納期の目安などです。
この1枚が、サイト・資料・プロフィール・展示会のパネル・広告の文の元になります。日本語の会社案内をそのまま訳すのではなく、相手が知りたい順に組み直します。英語は、AI翻訳で壁が大きく下がりました。英語以外の言語で出すときは、ネイティブが書かないと不自然になるので、書いてもらいます。
手段の役割分担:英語サイト・展示会・LinkedIn・広告・メール
手段は「どれが優れているか」ではなく、買い手の4段階のどこを受け持つかで選びます。
| 手段 | 主な役割 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 英語サイト | 調べに来た相手の受け皿。検索で見つけてもらう入口にもなる | 検索から人が来るまでに時間がかかる。作って待つだけでは届かない |
| 展示会 | 実物を見せ、短い期間にまとめて会う | 1回の費用が大きい。会期の後に連絡しないと接点が途切れる |
| LinkedIn(個人アカウント・Sales Navigator) | 会いたい相手を選んで声をかけ、話すところまで進める | 申請を送らなければ始まらない。毎日の小さな作業が要る |
| LinkedInの企業ページ・投稿 | 会社の信用を示し、つながった相手に思い出してもらう | 投稿だけでは、狙った相手に届きにくい |
| 広告(LinkedIn広告・検索広告) | 知ってもらう相手を早く広げ、資料請求や申込みを集める | 出す間は費用がかかり続ける。配る資料や申込み先が要る |
| メール | 名刺交換や問い合わせの後に、接点を保つ | 国や地域によって、送り方と個人の情報の扱いに決まりがある |
置く・届ける・続ける:中小企業の基本の組み合わせ
人手の少ない会社は、手段を「置く・届ける・続ける」の3つの役目に分け、それぞれ最低1つ持つと、取りこぼしが減ります。
- 置く(受け皿): 英語サイトと企業ページ、担当者の英語のプロフィール。相手が調べに来たときに、信用を確かめてもらう場所です。
- 届ける: LinkedInのつながり申請、展示会、広告。自分から相手の目に入る手段です。
- 続ける: 投稿とメール。すぐには買わない相手に、必要になったとき思い出してもらう手段です。
よくあるのは、置くだけ(サイトを作って待つ)か、届けるだけ(展示会に出て終わる)になる形です。説明が要る製品ほど、届ける手段の中に「会いたい相手を自分で選べるもの」を1つ入れておくと、相手が来るかどうかが運に左右されにくくなります。代理店・商社・越境ECなど、販路そのものの比べ方は「海外の販路開拓とは?」にまとめています。
- 相手が
調べに 信用を来た とき 確かめて もらう 置く受け皿英語サイト企業ページ担当者の英語のプロフィール - 自分から相手の
目に 入る 届けるLinkedInのつながり申請(相手を自分で選べる)展示会広告 - すぐには
買わない 必要に相手に なった とき 思い出して もらう 続ける投稿メール
英語サイト:調べに来た相手に、確かめたいことを見せる
声をかけた相手も、展示会で会った相手も、返事の前に貴社のサイトを見ます。最初は大きなサイトでなくて構いません。トップで「何を、誰に」を一文で示し、用途ごとの製品のページ、仕様書のPDF、対応できる国、工場や加工の様子の写真や短い動画、問い合わせ先をそろえます。
検索で見つけてもらうには、相手が使う英語の言葉(製品の一般的な名前、用途、規格の名前)でページを作ります。成果が出るまで時間がかかるので、ほかの手段と並べて進めます。
展示会:会期の前後をつなぐ
展示会は、実物を見せて、短い期間にまとめて会える手段です。一般的な目安として、海外の展示会は1回300〜600万円ほどで、名刺は約200枚集まり、そのうち見込み客は約2割です。会期の前にLinkedInで来場しそうな相手とつながって会う約束を取り、会期の後は名刺の相手にお礼と続きの話を送ると、1回の出展から得られる商談が増えます。
COSPALinksがご支援する中でも、「展示会で成果が出ないので、LinkedInで代わりにならないか」というご相談はよくあります。その場合は、代わりではなく組み合わせるものとお答えしています。会期の前にSales Navigatorで来場しそうな相手やバイヤーを探し、「会場で会いましょう」と声をかけておく形です。準備は「海外展示会の選び方・出展準備の流れ」、会期の後は「海外展示会のリードを商談化する方法」で解説しています。
LinkedIn:会いたい相手を選んで、話すところまで進める
LinkedInは仕事のためのSNSで、200以上の国と地域で14億人以上が登録しています(About LinkedIn)。会社・部署・役職が分かるので、知ってもらう相手を自分で選べるのが、ほかの手段との違いです。
声をかけるのは担当者の個人アカウントです。企業ページからは、つながり申請もメッセージも送れません。企業ページは会社の信用を示す場所にし、つながった人をフォローに招待すると、会社の資産として残ります。役割の分け方は「LinkedInの企業ページと個人アカウントの使い分け」、無料・有料の手段の全体は「LinkedInマーケティングとは?」で解説しています。
費用の一般的な目安は、1人とつながるのに約1,000円です。月150人とつながれば、1年で約1,800人に届きます。返信がなかった相手には、投稿で接点を保ち、反応を合図に2通目を送ります(「LinkedInの投稿で見込み客を育てる方法」)。
広告とメール:広げる手段と、つなぎとめる手段
広告は、届ける相手を早く広げたいときの手段です。LinkedIn広告は、役職・業界・会社名などで届ける相手を絞れ、費用は1クリック700〜3,000円ほどが一般的な目安です。広告に申込みのフォーム(リード獲得フォーム)を付けると、LinkedInのプロフィールの情報が最初から入った状態で、相手は少ない操作で資料請求などを送れます(LinkedIn Lead Gen Forms)。向く会社の見分け方は「LinkedIn広告はBtoBで効果がある?」で解説しています。
支援の現場では、広告と比べてどうか、という質問もよく受けます。その場合は、広告に反応するのはいま資料を探している相手が中心で、誰が来るかまでは選べず、関係も残りにくいとお伝えしています。LinkedInなら、すぐには買わない相手とも、つながりが残ります。
メールは、名刺交換や問い合わせ、面談の後に接点を保つ手段です。新製品や展示会の案内を、相手の業界に合わせて送ります。国や地域によって、営業のメールや個人の情報の扱いに決まりがあり、EUの一般データ保護規則(GDPR)もその1つです。名簿を作る前に、送ってよい相手と、配信を止める方法を決めておきます。
事例:展示会中心から、英語の発信と声かけを組み合わせる
食品・飲料向けの素材を加工する京都グレインシステムは、展示会が中心で、LinkedInはほとんど使っていませんでした。英語のプロフィールを作り直し、投稿を始め、Sales Navigatorで北米・欧州・アジアの食品メーカー・飲料メーカーの研究開発・商品開発・購買の責任者に声をかけました。事例ページでは、つながり申請402件、つながり163件、返信37件、有望リード13件の実績を紹介しています。
精密部品メーカーの狭山金型製作所は、毎日の投稿でフォロワーを増やしていたものの、つながる相手の多くは見込み客ではありませんでした。そこで、Sales Navigatorで狙う相手を絞って声をかける形に切り替えました。投稿で「続ける」だけでなく、狙った相手に「届ける」手段を別に持つことが要ります。
海外マーケティングで見る数字
数字は、買い手の4段階ごとに、国と手段に分けて記録します。合計だけを見ると、どこで止まっているかが分かりません。
| 段階 | 見る数字 | 見方 |
|---|---|---|
| 知る | 狙う国からのサイトの訪問、展示会の名刺、つながり申請と承認 | 数より、狙う業界・役職の相手がどれだけ含まれるかを見る |
| 調べる | 製品ページや資料の閲覧・ダウンロード、プロフィールの閲覧 | どの製品・用途に関心が集まるかを見て、伝えることを直す |
| 話す | 問い合わせ、メッセージの返信、面談 | 手段ごとに、面談1件にかかった費用と時間を比べる |
| 比べる・決める | 見積もりの依頼、サンプル、商談 | 時間がかかる。月ごとより、半年ほどの流れで見る |
LinkedInの数字には目安があります。つながり申請が承認される割合は、ざっくり2〜6割で、国や相手でかなり変わります。アジアは3〜6割を狙え、アメリカ・ヨーロッパは渋めで2〜4割です。公開されている導入事例では、つながった人の約2〜4割から返信がありました。国ごとの読み方は「LinkedIn海外営業の国別の反応」で解説しています。
見るときのポイントは3つです。
- いいねや閲覧の合計を目標にしない: 狙う相手からの反応かどうかを分けて数えます。
- 毎週見る数字と、毎月見る数字を分ける: 申請・承認・返信は毎週、面談と見積もりの依頼は毎月見ます。
- 費用は、会えた見込み客の数で比べる: 展示会・LinkedIn・広告を、1回の金額ではなく、面談1件あたりで比べます。
なお、マーケティングでつくれるのは商談の入口までです。受注につながるかは、製品・価格・その後の対応で変わります。
少人数での回し方
海外マーケティングは、専任の部署がなくても始められます。最初にそろえたい役割は3つで、1人が兼ねても構いません。
- 担当者: 毎日の声かけ、返信、記録をする人
- 製品に詳しい人: 技術の質問に答え、面談に同席する人
- 決める人: 月に1回、数字を見て、国・相手・手段を決め直す人
作業は、毎日・毎週・毎月の決まった仕事にします。
- 毎日: LinkedInのつながり申請に10〜15分。届いた返信と問い合わせには2〜3日以内に答え、3〜4回のやり取りを目安に、資料の送付や面談につなげます。
- 毎週: 投稿を1本(1本30〜40分ほど)。申請・承認・返信の数を見ます。
- 毎月: 面談と見積もりの依頼を国と手段ごとに見て、国・相手・伝えることを見直します。サイトには、反応の多い製品や用途のページを足していきます。
- 展示会の前後: 会期の前に来場しそうな相手とつながり、会期の後は名刺の相手にフォローを送ります。
1つの国で回る形ができてから、次の国や、展示会・広告など費用の大きい手段を足します。
- 毎日つながり申請に
10〜15分 返信と問い合わせには、 2〜3日以内に 答える - 毎週投稿を
1本 申請・承認・返信の(30〜40分ほど) 数を 見る - 毎月面談と
見積もりの 国と依頼を 見る 手段ごとに 見て、 国・相手・ 伝える ことを 見直す - 展示会会期の
前後を 会期のつなぐ 前に 来場しそうな 相手と つながり、 会期の 後は 名刺の 相手に フォロー
社内で手が回らない作業は、外に頼む方法もあります。LinkedInの運用なら、委託で始めて、成果の出た地域から社内に移していく進め方があります。決め方は「自分でやるか、頼むか」で解説しています。任せるときも、狙う国と相手、伝えること、数字の見方は社内で決め、報告を毎月受けます。
海外マーケティングでよくある失敗
- 日本語の資料を直訳する: 相手が知りたい順になっていない資料は読まれません。伝えることを英語で1枚にまとめてから作ります。
- 日本と同じ手段を、どの国でも使う: 国によって使われる手段が違います。中国本土向けは、LinkedInが使えない前提で選びます(「LinkedInは中国で使える?」)。
- 置くだけ、届けるだけで終わる: サイトを作って待つだけ、展示会で名刺を集めるだけでは、商談の入口が増えません。
- 数字を決めずに始める: 何を数えるかを決めていないと、続けるか、やめるかを判断できません。
- 支援会社や代理店に任せきりにする: 反応した相手の情報が社内に残らず、次の手が打てなくなります。
まとめ
- BtoBの海外マーケティングは、海外の買い手に知ってもらい、調べてもらい、問い合わせ・面談まで進んでもらう活動
- 手段より先に、国(1〜2か国)、買う会社と関わる人、伝えることを決める。伝えることは英語で1枚にまとめ、直訳しない
- 手段は、置く(英語サイト・企業ページ)、届ける(LinkedIn・展示会・広告)、続ける(投稿・メール)の役目で組み合わせる
- 数字は、知る・調べる・話す・比べるの段階ごとに、国と手段に分けて見る。費用は面談1件あたりで比べる
- 少人数なら、毎日・毎週・毎月の決まった仕事にし、1つの国で回る形を作ってから広げる
COSPALinksは、LinkedInを使った海外営業を支援しています。狙う国と相手の決め方から、英語のプロフィール、つながり申請、展示会と組み合わせた進め方までを、資料ライブラリにまとめています。
よくある質問
A狙う国と相手を決めることから始めます。そのうえで、英語サイトとプロフィールを整え(置く)、自分から相手に届く手段を1つ選びます(届ける)。国がまだ決まらないなら、LinkedInで複数の国の担当者に声をかけ、反応のよい国から力を入れる進め方があります。
A要ります。展示会で会った相手も、後から貴社のサイトや担当者のプロフィールを見て確かめます。会期の前後をオンラインでつなぐと、1回の出展から得られる商談が増えます。
A進められます。文章はAI翻訳で下書きを作り、名前・会社名・数字・製品の用語を見直してから出します。英語以外の言語は、ネイティブに書いてもらいます。
A手段で違います。LinkedInのつながり申請は、送れば最初の月から反応が出ます。検索から人に来てもらう英語サイトは時間がかかります。見積もりや受注まで進むかは、製品・価格・その後の対応で変わるので、まずは面談の数を手段ごとに追います。
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